第11章 裏で動いた恋模様
‐みつside‐
テツローくんが、一歩踏み出す。
扉を閉められないように、片足を敷居の上に乗せた。
悪徳セールスマンか。
テツローくんって、顔がちょっと怖いから、マジでそう見える。
その上、更にそう見えてしまうような胡散臭い笑みで私を見下ろしてきた。
「んで、赤葦は?」
「…いないよ。」
「どこ行った?」
嘘は、見破られてしまう。
だから、答えたくない事は無理に誤魔化さず、無言。
でも、それの所為で行き先を知っている事がバレたみたいで。
「赤葦は、ドコに居るんだ?」
今度は、無言すら許さないと満面の笑みで圧力を掛けられた。
「…入って。中で、話す。」
きとりちゃんに会いに行ってる。
事実を口に出すだけなのに、言葉にしたら泣きそうだった。
自分の家じゃないのに、勝手に人を上げるのは気が引けたけど、誰に見られるか分かったもんじゃない玄関先よりはマシ。
狭い部屋の中、敷いたままにしていた布団の上に座る。
テツローくんは、目の前に座って私の顔を眺めていた。
表情で、真偽を見抜くつもりだろうな。
まぁ、テツローくんみたいな鋭い人相手に、下手な嘘を吐く程のバカではないつもりだ。
だから、ありのままの真実を話す事にした。