第11章 裏で動いた恋模様
‐黒尾side‐
りらに病的なまでの愛を注ぐ赤葦が、りらに大怪我をさせた存在…センパイに対して寧ろ好意的な態度を取っていた事は、ずっと、不思議だった。
みつの話で、なんとなく納得した部分は多い。
りらには、ある種の宗教的な信仰心っつーか、アイドルとか見てるような羨望っつーか。
触れてはいけないもの、として神格化された部分があって。
赤葦にとって一番大事な…人の為に自分が犠牲になれるって部分がりらに似てるセンパイは…。
女としちゃ出来損ないな部分も多いが、触れられる恋愛対象になり得たんだろう。
りらの体に傷を負わせた事実よりも。
赤葦自身が、センパイを傷付けたくねぇ気持ちが上だったから、復讐の対象にすらならなかった。
大事なコトだから、2回言う。
りらの体に傷を付けた事より、自分の気持ち優先。
それは、りらに対してより強い感情がセンパイに向いてたって事に他ならない。
赤葦の強い感情に当てられて2人が上手くいってたら、俺との約束はどうなるんだろうか。
あの人に特定の相手が居て、幸せだったら奪う自信は流石にねぇな。
今でも俺にとって、センパイは一番大切な女性で。
こんな事になんなら、この間再会した時にでも、伝えときゃ良かった。
そんな後悔が頭を巡り始めた時、ズズッと鼻を啜るような音が聞こえて前を見る。
「お前が唆したんだろ。何?本当は自分が赤葦のコト好きで、他の女のモンになったら困るとか?」
完全に大泣きしてるみつの涙を止めようと、からかう声を送った。
コイツなら、ムキになって口先だけでも否定して、言い返してくる。
「そ、そんな事っ!」
予想通り、声を荒げてきたが。
「あ、るから…泣くんだよぉ…。」
続いた言葉は肯定で。
軽い言い合いでもして、気晴らししてやろうってアテが外れた。