第11章 裏で動いた恋模様
‐きとりside‐
言われた言葉が、頭の中をぐるぐると巡っている。
冗談で言ったなら、すぐに次の台詞でも言うだろうと思ったけど、それは無かった。
それなら、私の方が冗談にしてしまおうと思っても、少し強く掴まれた手から真剣さが伝わってきて。
本気の告白なら、そんな事は出来ない。
「…赤葦、聞いていい?」
恋人ごっこ、の延長はしない。
それが即座に伝わるように、呼び方を元に戻した。
「はい。構いませんよ。」
赤葦も分かってくれたようで、前と同じ年上扱いに戻してくれる。
聞き分けが無い事をするようなヤツじゃないのは分かってたけど、それだけで安心した。
「アンタが好きなのは、りらじゃないの?」
「りらは、好きと言うより、憧れの対象なんですよ。気に入った芸能人を追い掛ける、その感覚に近いですね。
りらを知って、りらに尽くせれば、それだけで良いんです。」
赤葦の気持ちが本気なら、一番気になるのはりらの事。
分かりやすいように例え話をしてくれたけど、手の届く範囲に居たのに、尽くせるだけで良いなんて、まるで。
「神様に対する信仰心みたいだね。」
「そうですか?」
本気で、そう思った。
いくら頭の良い赤葦でも、これは分からないのか眉を寄せている。
「だって、芸能人であっても同じ人間を相手にするなら、多少の見返りは求めるもの。
それを、尽くせれば良いと言い切れるのなら、人ではない、傍に居ても手を出してはいけないものを、相手にしているような気がしたから…。」
説明してみると赤葦も納得したようで、何度も頷いていた。