第11章 裏で動いた恋模様
‐きとりside‐
この、私を撫でる手が、本当の恋人のものだったら。
布団の上だって事もあるし、お互いに半裸だし。
そういう、雰囲気になるだろうけど。
生憎と、ソレはシない条件で恋人ごっこをしている。
いつまでも、撫でられていたら甘い空気に負けて、キスくらいねだってしまいそうだったから、手を掴んで止めた。
「なんか、流されそうになったわ。色男は怖いね。」
冗談っぽく口に出して、甘い空気を振り払おうとしたけど。
京治が唇を笑ませるように微かに動かす。
「流されてしまえば、良かったのに。」
その口から出た言葉は、静かで、恐ろしいくらい低くて、真剣に言っているように聞こえた。
「…あ、あはは。な、なに言ってんの?」
本気とは受け取らない意思を示して、わざとらしく笑ってみたけど、声は乾いている。
動揺が、完全に表に出てしまっていた。
そこを突っ込んで、笑いの方にでも話が進んでくれれば良いと思ったのに。
「最後の日に話すって言った、恋人ごっこをして欲しい理由。やっぱり、今言っても良い?」
京治は、声のトーンは変えずに喋り、私の手を掴み返す。
逃がさない、と行動で伝えてきているのが分かる、痛みは無いけど、簡単には払えないくらいの力。
りらを忘れたい。
それとは、違った意図があったのだと気付いた。