第11章 裏で動いた恋模様
‐きとりside‐
赤葦は、きっと苦しいんだ。
りらが、人のものになったから。
だからって、泣き叫んだり、酔い潰れるまで飲んだり、そういう気晴らしは出来なくて。
りら達と、物理的に距離を取って、他の女性に目を向ける。
それが、大事なのだと思ったんだろう。
可愛い弟分が、失恋の痛みを紛らわそうとしているのが分かって、断れる程に冷たくはない。
ただ、身体を使って慰めてやる事は出来ないから、その一線だけは絶対に越えない為に先に条件を出した。
「それで、構いません。デートして貰えますか。」
頷きで、了解をした赤葦の手が目の前に差し出される。
男らしくて、大きな掌だけど、クロより、少しだけ指が短いかな、なんて。
彼氏(仮)を元彼と比べる最低な思考が頭を過ぎて、掴めなかった。
「俺、こっちの事は分からないから、きとりにリードして貰わないと困るよ。」
動けない私の手を取り、指先を絡ませてくる。
聞こえる声は耳慣れた赤葦の声だけど、喋り方とか、私の呼び方が違って不思議な感じがした。
そういえば、敬語や敬称は壁だと言っていたっけ。
それを思い出すと、意外に形から入りたいタイプなんだな、と可愛らしく思える。
「さっき、観光してきたんじゃないの?京治。」
少しでも痛みを軽減してやれるなら、それにはノって。
手を握り返すと歩き始めた。