第28章 沖縄旅行は海の香り
「ああアレ? 今寺坂のリュックに入れといたんだけどさ、鼻フック、洗濯バサミ、ガムテープ、首輪の拘束系、安全ピン、偽ゴキブリ偽うんこ、奥田さんが作った悪臭化合物のその時々に合わせて使うグッズ、わさび、からし、にんにく、ブート・ジョロキア、センブリ茶とかの食べ物系、爆竹と不幸の手紙、パッチンガムと私はバカですシールは嫌がらせに使う用で……って感じかな」
「途中途中殺人兵器と思わしき物が入ってるね、特に偽ゴキブリ辺り」
「あはは、ちゃんと偽物だよー、袋の中で動き出したら困るもん」
カルマ君は明るく笑うが……って事はゴキブリ動かなかったら袋に入れる気だったのか……?
先程のグリップの時の恐怖とはまた違った鳥肌がぞわっと立つ。その後カルマ君はしばらく奥田さんと談笑していたが、ふいに私に鋭い視線を向けた。
「東尾さんさあ、俺の非常用持ち出し袋に関して聞いたんだから、東尾さんがぶら下げてるポシェットも気になるんだよなあ、聞いていい?」
「え、いいよ」
「……いいの?」
ぽかんとするカルマ君に逆に私もぽかん。
「普通に怪我薬とか……医療用の道具。皆が怪我した時用だよ」
「あ、そう…」
カルマ君は考え込む動作を一瞬した後、またいつもの軽い笑顔を見せた。
……何でだろうか、少し、違和感。それはカルマ君だけじゃない。私は後ろを少しふりかえった。
光る金髪、いいスタイルと似合わない親父ギャグ。…莉桜も、だ。確かに2人は勘が良い。でも…まさか私が違う世界から来た、なんて突拍子もない事には気が付かないはずだ。
……だよね?
私も少し過敏になりすぎてるのかもしれない。まん丸殺せんせーと目が合って、私はニッコリ笑った。
6階のテラスラウンジ。
「ここから先は男は入りにくいな」
「クラブか……まあそうだな」
「岡島がいれば死んでも入りたがったかも分かんねぇけどな」
骨に響く程の音がここにいても分かる。あんまり入りたくはないけど仕方ないね。
「若い女には多分チェックが緩い。女子達頼めるか?」
磯貝くんが不安そうに言うと、イケメグが
「任せておいて磯貝くん。私達やってみせるよ」
とイケメンに笑った。
作戦はこうだ。男子達はクラブを抜けた先の廊下にある裏口の扉の向こう側にいる。裏口には鍵がかかってるから女子達はその鍵を開けて、一緒に7階へと向かう。
