第28章 沖縄旅行は海の香り
「だががっかりぬ。お目当てがこのザマでは試す気も失せた。雑魚ばかり1人で殺るのも面倒だ。ボスと仲間呼んで皆殺しぬ」
グリップがガラケーを開き、連絡しようとしている様子に皆が驚き、止めようとした。
瞬間、グリップの手からガラケーが離れた。
カルマ君が近くにあった木を持って植木鉢でガラケーを叩き割ったのだ。ビキッという音とともに後ろに叩きつけられ、ガラスも割れる。
「ねぇ、おじさんぬ」
どうやら名前がわからないカルマ君は『ぬ』ばかり付けるグリップをおじさんぬと呼ぶことに決めたらしい。
「意外とプロってフツーなんだね。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ」
道具を使ってならね、と注釈に付け加える。
「ていうか、速攻仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖いひと?」
上目遣いでグリップを挑発的に見つめるカルマ君に皆が焦る。
「よせ無謀…」
「ストップです烏間先生」
叫びかけた烏間先生を殺せんせーは制した。
「アゴが引けている」
「…!?」
今までのカルマ君は、上から相手を見下すような目をしていたけど、アゴを引いて相手を正面から見つめている。
そんなカルマ君の様子に、グリップは上着を脱いで
「………いいだろう、試してやるぬ」
と言った。カルマ君は既にガラスと一緒に割れてしまった植木鉢に植わった長めの木を持ってニヤリと笑った。
私はその時だけ…その時だけ気が付かなかった。莉桜が私をじっと見つめていることを。