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【トリップ】全てを知っている私が!【暗殺教室】

第28章 沖縄旅行は海の香り



イリーナ先生が今どこから出てきたのかも気にしている様子はない。
「来週そこでピアノを弾かせて頂く者よ。早入りして観光してたの」
白いピアノを指差し、いかにも酔ってる、というように甘ったるく言葉を溢すイリーナ先生。

警備はなるほど、と言ったように目を合わせた。イリーナ先生は警備に見られないように小さく笑い、
「酔い醒ましついでにね、ピアノの調律をチェックしておきたいの」
とピアノの椅子にぎしりと腰掛けた。
「ちょっとだけ弾かせてもらっていいかしら?」
少々露出が激しいドレスはだいぶ艶かしい。振り向きざまのイリーナ先生は絵画の様だ。

「えっ…と、じゃあフロントに確認を」
そう言う警備の腕を細い腕でがし、と掴みイリーナ先生は上目遣いで
「いいじゃない、あなた達にも聴いて欲しいの。そして審査して」
と続けた。

「し、審査?」
戸惑った様な警備の様子に
「そ」
と簡素に答えると、イリーナ先生は手を挙げた。

「私のことよく審査して、ダメなとこがあったら叱って下さい」

イリーナ先生の指がピアノに触れた…と。


一瞬、魔法かと思った。


連続する音符はまるで生きているかのように心地よい旋律を奏で、耳に甘く入る。

「め…メチャメチャ上手ぇ……」
皆が驚きイリーナ先生から目が離せない。

私にはピアノのことはよく分からないけど、これだけはわかる。この曲は…今まで私が聞いた中で一番色気がある。曲のメロディーもそうだけど、イリーナ先生の一挙手一投足が音楽みたいで、露出が激しいと思っていたドレスもこれの為に用意されたかの様に格式高いものに見える。

「ね、そんな遠くで見てないで」
イリーナ先生は遠くにいる警備にも声をかけた。
「もっと、近くで確かめて」
顔の近くで手をふり呼ぶ。
「お、おお…」
警備はイリーナ先生の方にフラフラと寄っていった。こりゃもう虜だな。その時、ピアノを弾く手を止めたイリーナ先生は左手を下ろし2本指を出した。
『20分稼いであげる』
そしてすぐさま人差し指だけ出し、非常階段の方を指さす。
『行きなさい』
言葉はなくても通じる。だって、私達はイリーナ先生に釘付けだったんだから。

烏間先生の先導で私達は非常階段へ向かう。その間にもイリーナ先生はピアノを弾く。

ここからは後ろ姿しか見えない。あとは興奮してる警備とか。でも……。

美しい先生だ。


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