第28章 沖縄旅行は海の香り
「でも、未知のホテルで未知の敵と戦う訓練はしてないから」
磯貝くんが少し登った崖の上から烏間先生を見下ろした。
「烏間先生、難しいけどしっかり指揮を頼みますよ」
その言葉にみんなの気持ちを代弁するように寺坂が続く。
「おお、ふざけたマネした奴等に…キッチリ落とし前つけてやる」
……そうだ。皆は許せないんだ。勝手に外から入ってきて、勝手に皆を苦しめて。
「見ての通り彼等は只の生徒ではない。あなたの元には15人の特殊部隊がいるんですよ」
殺せんせーが烏間先生に向かって笑顔で言う。
「さぁ、時間は無いですよ?」
その言葉を聞いて烏間先生は観念したように目を閉じた。
いや……もしかしたら何処かで分かっていたのかもしれない。E組ならやりかねないと。何せ烏間先生と殺せんせーに育てられた、中学生兼殺し屋だもんね。
「注目!! 目標山頂ホテル最上階!! 隠密潜入から奇襲への連続ミッション!! ハンドサインや連携については訓練のものをそのまま使う!! いつもと違うのはターゲットのみ!!」
……そうだ。殺せんせーが、『あの人』になっただけだ……! いつもより凶悪具合は違うかもしれないけど、でも……
「3分でマップを叩き込め!! ヒトキューゴーマル作戦開始!!」
「おう!!」
皆と一緒に声を上げる。
……ヒトキューゴーマル…19時50分。今も自衛隊か何かで使われているらしい時間の表記だ。私達は中学生で殺し屋。プラスで今は特殊部隊。
ベルは鳴らないけれど、私達の頭の中で、闘いのゴングが鳴る。
いざ、ホテル潜入ー……!!