第24章 二つ島~治療~ ★
「・・・」
重ね合わせた唇をマルコが離せば、沙羅は小さく深呼吸した。
どうやら呼吸を止めていたらしい。
本人は気づかれないように呼吸をしたつもりだが、微かに上下した肩、何より酸欠で上気した頬がそれを物語っていた。
「息止めてたのかい?」
その不慣れな反応にマルコはくくっと笑いながら、その表情をじっ・・・と眺めた。
「だ、だって・・・」
からかわれたと思い、気持ちが高ぶった沙羅は気が付かない。
マルコの瞳の底に、なりを潜めていたはずの獣が姿を現し始めていたことに。
「いつ息したらいいかわからなっ?!・・・っ・・・っつ・・・」
最後まで言い切ることなく沙羅の唇は塞がれた。
驚きに思わず後退しようとするも、先程からずっとマルコの腕の中。
つい先ほどまで後頭部にそっと添えられていた手も、今は逃さないと言わんばかりだ。
沙羅の唇を食むように何度も重ねられる口づけ。
そして時折、唇に微かに這わされるマルコの舌。
「マルっ?!・・・っ・・・ぅんッ・・・」
羞恥と呼吸の苦しさを伝えようとすれば、そのわずかに開いた唇にマルコの舌がねじこまれる。
怖くはない。
怖くはないが、どうしたらいいかわからない。
緊張にマルコの上衣の裾を握っていた沙羅の手が震えた。
「・・・怖いかい?」
それに気づかないマルコではない。
体は密着させたまま、唇を離して少し困ったような、少し哀しそうな表情を浮かべた。
"そんな顔をさせたいんじゃない"
沙羅は胸の痛みを感じながら首を横に振ると、震える手をマルコの腕にそっと手を重ねた。
「違うの・・・、どうしたらいいか、わからない」
「!」
マルコの目が一瞬見開かれ、ついで優しくも妖しく笑った。
「教えてやるよい、これから少しずつ・・・」
その笑みは大人の男の色香を漂わせていて、沙羅はまたしても耳まで真っ赤になった。
マルコはその耳を唇で食みながら、囁いた。
「口・・・開けて、舌ぁ出せるかい?」
"!!"
瞬間、沙羅は瑠璃色の瞳をこれでもかという程大きく見開きながらマルコを見た。
見上げる瞳は羞恥に潤み、顔には薄らと朱が走る。
その表情をマルコがじっと見つめれば、
その視線から逃れるように瞳が逸らされた。
「・・・」
その初々しい反応に、マルコの喉がごくりと音をたてた。