第24章 二つ島~治療~ ★
沙羅の予想通り過ぎる返事に、マルコは笑顔を見せた。
「さて、そろそろ行くかい?」
何事もなかったかのようなマルコの反応に、沙羅は心の奥で落胆しながらも、ほっと胸をなで下ろす。
「少し待ってて、すぐ準備するから」
「よい」
マルコの返事を背中に沙羅は自身の部屋に向かった。
夜島に向かう途中、カフェで遅めの昼食を取る。
「マルコって医者だったの?」
席に着き、一息つけば沙羅はずっと気になっていたことを口にした。
沙羅の記憶では昔は見習い航海士として勉強していた。
そして再開してからは航海士として手腕を奮っていたはず。
するとマルコは苦笑を浮かべて、歯切れの悪い返答をした。
「あ~・・・まぁ、航海士兼医者かねい、いや、これからは医者か・・・」
溜息をつきながらマルコは医者になった経緯を語った。
沙羅がいなくなってから少しして、高齢になってきたゲンパクが弟子を欲しだしたこと。
その際に白羽の矢が立ち、手伝いから始め、医者の勉強もしたこと。
自身は航海士が好きだが、頼もしい同僚だけでなく、
後任も育ってきている。
対して長く募集はしているが、一向に新たな同僚や後任が現れない医者。
今までは見習いだと言い訳をして、逃れていたが
恐らく、今後は医者が本業になるであろうこと。
「医者で海賊ならわかるが、海賊で医者なんて聞いたことねぇ」
自嘲気味に言うマルコ。心の奥底に常に潜む思い。
“嫌われ者の自分が、医者なんて相応しくない”
どんなに宝を得ても、
どんなに名を上げても消えることのない思い。
すると沙羅は笑って言った。
「じゃあこれからは、たくさん聞くんだね、海賊で医者の不死鳥マルコ!」
誇らしそうに言う沙羅に、マルコは一瞬、目を見開くと笑い出した。
「ありがとよい」
きっと死ぬまでこの思いとは一緒だろう。
だが沙羅は、その思いまでもマルコの一部だと受け入れてくれる。
嫌われ者だと恐れ、卑下するマルコを頼り、家族と慕い、誇らしいと言ってくれる。
嬉しくて
例えようもなく嬉しくて
ただ、ただ嬉しくて、マルコは心の底から笑顔を浮かべた。