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海を想う、海を愛する。【ONE PIECE】

第24章 二つ島~治療~ ★


 話はマルコが一番隊への異動を告げた日に遡る。
一番隊への異動を告げた時、沙羅は文字通り固まっていた。
が、異動の話だけなら動揺はしても、すぐに異動の理由を問いただしてきただろう。
沙羅が唖然と固まった理由は他にあった。
それはゲンパクからの試練と祝いを混ぜた爆弾だった。
目覚めた沙羅にゲンパクは言った。
『もう問題ない、後は日々の消毒と抜糸だ』
頷いた沙羅は、自分の部屋に戻れると喜んだ。
しかし、ゲンパクは一喝した。
『馬鹿野郎、誰が退院していいって言った?!』
横で聞いていたマルコも、“退院以外にねぇだろい”と内心突っ込んだ。
が、歳三の弟分だったゲンパクはマルコよりも上手(ウワテ)だった。
『転院だ』
首を傾げる沙羅と、嫌な予感に眉をひそめたマルコを見比べながら、ゲンパクは続けた。
『マルコは俺の弟子だ、今日からマルコに見て貰え』
ぽかんとなる沙羅と、焦るマルコ。
『待て待て!俺は見習いだ、それに寝かせる場所がねぇ』
だが、ゲンパクはにやりと笑った。
『今日から医者だ、最近部屋も移動したよな?』
『!!』
盗聴しているのでは?と思う程にゲンパクは、船内のことを知っている。
確かにマルコの部屋は最近雨漏りし、家具もいくつか駄目になった。
その際に兼ねてより、使ってはどうか?と言われていた歳三とお琴夫婦の部屋を引き継いだ。
新調する家具を選ぶ際に、沙羅を付き合わせたのは記憶に新しい。
基本的には自分の好みの家具を選んだが、ベッドを選ぶ際には、マルコの好きな物にしたら?と訝しむ沙羅を誤魔化し好みを聞き出した。
理由は言わずもがな。
後ろめたさに押し黙るマルコを余所に、
『今日からマルコが主治医だ、治るまではそこにいろ』
と沙羅に言い放つと、ポンとマルコの肩を叩いた。そして耳元で呟いた。
『激しい動きはさせるなよ、傷口が開く』
『っ!』
細い目をこれでもかと見開き、薄らと赤面したマルコを見て、満足げに去ったゲンパク。
そうして、マルコの部屋に“転院”させられた沙羅の元に、私物が勝手に運ばれて来れば、否はないと悟ったのだろう。
『何もしねぇよい』
頭に"傷が塞がるまでは"と密かに付け加えながら、泣きそうな沙羅を宥め、その晩は離れたソファベッドで眠ったマルコ。
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