第3章 第三章
いきなり大声を出した私に蜻蛉切さんは目を見開いて驚いていた。私はくしゃくしゃと髪の毛を掻きむしりテーブルに伏せる…なんとかしてビッチだと思われず仲良くなれる方法はないのだろうか。でも刀剣男士って皆男だし、可愛い乱ちゃんや美人な次郎太刀さんと仲良くしたとしても私自身の性別は変わらない。あぁ…うん、結論的に言うならば。
「男になりたいっ…」
独り言でぽつりと呟いたつもりが、思いのほか声が低く這うような暗い声だった。そのせいかザワザワと刀剣男士達は戸惑いを見せる。私がちーんと項垂れていれば、気軽に声を掛けてくれたのが次郎太刀さんだった。艶やかな長い髪が揺れて、両手に酒壺を手に持っている。
「なーにあんた、男になりたいのー?」
「次郎太刀さーん…」
「なんで一口も酒飲んでないのに、そんな今にも泣きそうな顔してんのさっ!」
「だって!私ビッチじゃないですからね!?好きな人は一途ですもん!男になれたらこんなにも面倒な事はなかったというのに!」
「あー…はいはい。分かった、分かった…」
上から恋愛禁止とかさ、そんなの無理だよ。来たばかりの私はもう色々と驚きやときめく事が多過ぎてこれで好きにならないなんて可笑しいし?なんとか予防線を張ってはいるけれどもさ。えっ?私をどうするの、どうしたいの。本当になにかに試されてるのか。と思えるくらいにやって行ける自信がない。
イケメン万歳!ショタ万歳!審神者万歳!しかし『YESロリショタNOタッチ』という言葉があるからショタの扱いには気を付けていこうと思う。
「自分の性格がゲシュタルト崩壊し始めている!なんかもう自分が怖い!すみません!お風呂に入って今日は寝ます!お休みなさい!」
「えっ!ちょっと!?」
次郎太刀さんの声を遠くに聞きながら私は走り去って行った。寝室に入り襖を閉める、薄暗い部屋でズルズルと座り込んでしまった。あぁ…手が痛い。じんじんと痛み始めた。思い切り握り締めて走り去ってせいか手のひらは血が滲み出ている。
「驚いた…君がここにいたとはな」
「うんっ!?いやいや…鶴丸さんこそなんでそんな所に?危ないですし天井から現れないで下さいね?」
呆れる私は天井から声をする鶴丸さんを見上げた。しかし部屋が薄暗い為か見えない、そんな時静かに天井から降り立った鶴丸さんが私の手首を掴む。じんとした鈍い痛みが走り私は苦笑いを浮かべた。
