学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
「やっぱりユースタス先輩は覚えてるんだね…」
「一度思い出すと忘れないけど、その他覚えた記憶はリセットされるみたいね」
キッドの背後から少し遅れてローがやってくる
目の前で嬉しそうなセナをチラリと一瞥するが、何事もなかったように少し離れた席についた
「トラファルガーさん、無反応になっちゃいましたね」
「いちいちイラついてたら、アイツも保たねェんだろ。それよりルフィがうるせェ、さっさと食わせろグル眉コック」
ビビの心配そうな声に、腕を組んで眠っていたようなゾロが言葉を返す
片目を眇めたまま、サンジを睨みあげた
「テメェらは一番後だ!まずはレディファーストだからな」
全員が揃ったことに、サンジがまず女子の集まる机に置いた重箱の風呂敷を解く
フタを開けると、その美しい料理の数々にみんな目を輝かせる
と、その時だった
「やっぱりサンジさんの料理はいつ見ても美味しそう〜!」
「本当だよね!流石一流コックさん!」
「当然よ、サンジくんは………って、ちょっと待って」
「今、いつ見ても…って言いました、よね?」
またもビビの声に、全員の注目がセナに集まる
痛いほどにみんなの視線を感じて、不思議そうに周囲を見回した
「あれ、…えっと」
知らない顔に囲まれている状況に、セナは頭にハテナを浮かべた
しかし中には見知った顔も居ることに気付く
「この人たち、シャチのお友達?」
「だーっまたかよ!」
「??違うの?じゃあ…キッド?」
「違ェな」
「サンジさん?」
「まァ、そうだな。こいつらは俺の仲間だ」
ナミの分析通り、どうやら1人思い出すたびに、それまでの記憶はリセットされてしまうようだ
しかし何をきっかけに誰を思い出すのか、そこまでは誰も分からない
記憶を引き起こすきっかけさえ掴めれば、すぐにでも全てを思い出せるかもしれないのに
少し離れた位置で、様子を伺っていたローは己の無力さと歯痒さに奥歯をギリと噛み締めた
あと何度、自分の存在を忘れてしまうのか分からない
忘れられるたびに、記憶と共にセナの心まで遠ざかる気がしてしまう
『こんな弱気で…どうする』
どんな彼女でも守り抜くと、愛すると誓ったのだ
たとえ記憶がなかろうが…その想いは変わらない
しかしそれはあくまでローの想い
記憶のないセナは望んでいるのだろうか
