学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)
第2章 聖夜のシンデレラ(*)
不安げに口を開いたセナの言葉を耳にした途端、スモーカーは瞳を見開き
咥えていた二本の葉巻をうっかり落としかける
入学当初から何かと気にかけていた、受け持つクラスの生徒だ
それなりに親しい間柄とも、柄にもなく自負していたつもりである
「オイ、セナ…今何つったァ?」
「ふぇ、!」
モクモクと揺蕩う煙が、まるでスモーカーの怒りを表すかのように天井まで高く上ってゆく
その鬼のような形相に、睨み付けられるセナはピシリと背筋を正して動けない
「ちょ!落ち着けって!これには理由があるんだって!」
「アァ?理由だァ?」
掴み上げられていたシャチがジタバタと暴れ、スモーカーの気をひこうとする
視界に腕や足やを捉えはしているが、それでも視線はセナを見下ろしたままで聞く耳持たない状態
「オイ」
しかし言われてみれば確かに対峙するセナは、どこか様子がおかしい
元々コワモテと言われる分類ではあるが初めて出会った頃ですら、こんなに怯えてみせたりしなかったはず
「シャチ、どういうことだ」
「取り敢えず一回降ろせよ!あだぁっ!」
噛み付くような態度にイラっとしたらしいスモーカーがパッと手を離すと
支えを失ったシャチは床に叩きつけられる
「シャチ、大丈夫?」
「いてぇ…」
打ち付けた腰をさすりながら、涙目のシャチに駆け寄るセナの前に誰かが立ちはだかる
「スモーカー、私から話すわ」
「ア?ナミか。理由を知ってンなら誰でもいい、さっさと話せ」
間に入って来たのは、様子を見兼ねたナミだった
なるべく話が他の生徒に広がらないように、スモーカーを屈ませボソボソと耳元で端的に状況を説明する
「…チッ、厄介だな」
「担任なんだから、しっかりフォローしてよね」
「指図すんじゃねェ、そんなこたァ分かってる」
葉巻を一旦口から離し、あさっての方向に煙を吐き出すとセナに向き直った
「悪かったな、ビビらせて」
「いえ私こそ…担任の先生だったんですね」
シャチから聞いたのか、全く見知らぬ人間で無かったことが分かると雰囲気が途端に柔らかくなったのが分かる
相変わらず警戒心が薄くて、親のように心配になってしまう
記憶が無いとなると、何処からどんな嘘を刷り込まれかねないかと心配になる
セナの周りには何かと敵が多いのだ