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学園は溺愛の箱庭(ONE PIECE長編学園パロ夢・番外編)

第2章 聖夜のシンデレラ(*)


ローが口を開きかけた時、タイミングが良いのか悪いのか
予鈴のチャイムが鳴り響いた

「…ハァ」

開かれた唇からは、言葉が吐き出されることはなく
代わりに重く長い溜息が吐き出された
そして何も言わず、ローは踵を返す

「あ、ッの」
「…昼に、また来る」

意味を持たない引き止めに、振り返ることなく手短に告げるとローは静かに教室を出て行った
そんな後ろ姿を見送り、何故だろうかただ後悔に苛まれてしまう

ひどく不安な気持ちに押し潰されてしまいそうだった

『嫌いにならないで』

見えなくなった後ろ姿に、自然と湧いて出てくるような感情を覚える
けれど、それが何故なのか、今のセナには分からなかった

「セナ、どうした?」
「あ、いや…大丈夫。ありがとねシャチ」
「おー気にすんなって……あれ?お前、今なんて」

ボーッと廊下の方を見つめたままのセナを心配したシャチが恐る恐る声をかけると
普段となんら変わりのない返答は、ごく自然に受け入れられるはずだった

「その手で二度とは言わないからね?」
「いや言えって!ワンモアプリーズ!」

しかし今の状況で、慣れ親しんだやり取りは違和感でしかない
シャチはセナの両肩を掴んで、必死に言葉を引き出そうとする

先ほどキッド以外、誰の顔も分からないはずだった
それなのに今、彼女は自然とシャチの名を口にしたのだ

「名前を!もう一回呼んでくれ!」

セナの顔が、若干引きつっているのも気にせず懇願する

「シャチ」

望んでいた幼馴染の可愛らしい声ではなく、明らかに男の声で名を呼ばれた
次の瞬間、グイと制服の襟を掴まれセナより目線が高くなる
シャチが恐る恐る気配のする方を見遣ると、モクモクと揺蕩う白煙の向こう側に青筋を立てた白髪の大男

「ヒッ!は、ははははくりょ」
「俺のHR中に女を口説くたァ…いい度胸だな」
「いや誤解!それ誤解ッス!助けてセナ〜!!」

助けを乞うように目下で立ち尽くすセナに視線を落とした
しかし様子がおかしい。ぽかんと口を開けたままだ

「セナも席につけ」
「へっ、あっ」
「なに驚いた顔してやがる」

まじまじと観察するような視線に違和感を覚えたスモーカーは、煙を吐き出しながら首を傾げた

「あ」
「あ?」
「新しい…先生ですか?」
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