第27章 小さな太陽と大きな背中
『及川先輩?歩きながら考え事してると危ないですよ?』
横断歩道の信号が点滅をはじめ、そこで足を止めながら紡ちゃんがオレを見上げた。
「オレが今、何を考えてたか・・・分かる?」
少し間を開けて、紡ちゃんの事だよ、って言おうとしたのに。
『夕飯何かなぁ?・・・ですか?』
・・・・・・・・・これだもんなぁ。
「あはは、確かにお腹空く時間だよね!・・・なんか食べてく?付き合うよ?」
『・・・帰ります』
「ちぇ~、残念だなぁ。じゃあさ、今度、」
『デートはお断りします』
・・・読まれてる上に即答?!
「紡ちゃん、オレにはいつも冷たい・・・」
そんな事ないですよ?と紡ちゃんが笑う。
いいなぁ、こういう極々たわいもない会話。
だけど、それだけじゃもう、満足出来ないくらいオレは紡ちゃんと一緒にいたいんだけどね。
ゆっくりゆっくり歩いていても、紡ちゃんの家までの距離は確実に縮まって行く。
楽しい時間は、あっという間なんだよなぁ。
上を向きながら、はぁ・・・とため息を吐くと、ポツリと顔にひとしずく落ちてきた。
『雨が・・・』
「紡ちゃん、傘は?」
『今日は雨の予報出てなかったから折り畳み傘も持って来てないんです』
「そっか・・・」
『でも、あと少しで家だし少しくらい濡れても平気だから、及川先輩はここで先に帰って下さい』
「コラ、そういう訳には行かないでしょ!」
言葉を交わしているうちに、雨粒は次第に大きくなりオレ達に染みていく。
どこか雨宿り出来る場所は・・・あそこなら!
「紡ちゃん、ちょっとゴメン!」
『えっ?!わっ!!』
雨脚が強まる中、サッと紡ちゃんを抱きかかえ公園の中に入る。
ここの公園って、親子連れとか多いからテーブル席のベンチなら屋根付きだし。
「ここなら少し、雨宿りできるでしょ?予報では雨とか言ってないなら、通り雨かも知れないし」
そう言いながら紡ちゃんをそっとベンチに下ろす。
『あの・・・重い、のに・・・すみません・・・』
「重い?何が?」
『・・・私です』
紡ちゃんが重い?!
ないない!!
「全然そんなことないけど?今だって簡単にひょいって・・・あ、オレって紡ちゃん限定の誘拐犯になれるかも!」
『それはイヤです』
また即答?!
「誰かに、重いって言われたりしたの?」