第27章 小さな太陽と大きな背中
言ってしまってから、シマッタ!と後悔する。
「今のナシ!ナシね!」
『影山が・・・』
「飛雄?」
『昨日、影山に体重増えた?って』
飛雄・・・お前なんて事を!
「た、たまたまからかっただけとかじゃない?だってオレはそんな事、全然思わなかったけど?」
今だって紡ちゃんを重たいとか感じなかったし?
『影山だけじゃないんです!菅原先輩だって、ふっくらしたって!だから・・・』
菅原先輩?
・・・あの爽やか君か!!
爽やか笑顔で、なんて爽やかじゃない事を!
「気にしなくていいんじゃない?もともと紡ちゃんは細過ぎるくらいなんだから。それに、今はケガ人なんだからしっかり食べて治さ・・・」
ん?
待てよ・・・なんか引っかかる。
さっき、なんか食べてく?って誘ったのに間髪入れずに断られた。
そして、飛雄と爽やか君の言葉を気にしてて?
重たいのに、すみません?
「紡ちゃん?まさか、だけど。ダイエットしようとか、思ってない・・・よね?」
ちょっと屈んで顔を覗けば、みるみる赤くなって顔を逸らさせた。
・・・ビンゴかっ?!
よくよく顔を見れば、少し顔色も良くないような・・・?
「紡ちゃん、お昼は何食べた?」
『・・・抜きました』
「朝は?」
『朝は、ヨーグルト・・・』
「昨日の夜は?!」
『・・・野菜ジュース飲みました』
・・・・・・・・・・・・。
「全然食べてないじゃん!!ダメだよ!」
『食べてなくても、ギリギリ栄養は摂ってます』
「そんなの食事にも栄養にも入らない!ダメだ食べなきゃ!」
『お・・・及川先輩には関係ない!』
関係、ない・・・
そのひと言が、オレに刺さって黙り込んだ。
関係なくは、ないよ・・・紡ちゃん。
お互いが沈黙の中、雨の音だけが響いていた。
『あの、ごめん・・・なさい。ムキになって私、酷いこと言って・・・』
なんて言葉を返せばいいのか、迷う。
迷って、迷って・・・言葉が出て来なくて、オレは紡ちゃんの隣に・・・座った。
「あの、さ、」
『これ、使って下さい。部活には出たけど、使ってないタオルですから・・・』
ほぼ同時に口を開いて、紡ちゃんがオレの髪から落ちる滴に、そっとタオルを当てる。
今、部活には出たって言った?
オレの頭に、烏野の主将の顔がチラついた。
『帰り、ますね』