第27章 小さな太陽と大きな背中
~及川side~
岩ちゃんってばヒドイよなぁ・・・
通常練習が終わって、軽く自主練しようかな?って思ったのに帰れとか。
そのくせ自分は残ってるし。
矢巾と合わせる練習が大事だからとかさ?
こないだ烏野に負けた事が相当響いてるみたい。
オレだって同じだってーの!
ピンサーでしか出てないんだからね!
セットアップから出たかったんだからね!
なのに、完治するまで自主練禁止!とか怒るし。
挙句の果てにサッサと帰れ!とか言って体育館から追い出されるし。
あ~あ・・・つまんない。
家に帰って・・・筋トレでもするかな?
フンッと鼻を鳴らして前を向き足早に歩く。
あ、どうせならCDショップでもついでに覗いて・・・なんて思ったら。
・・・紡ちゃん?
今まさに立ち寄ろうとした店の向かいのベンチに、ちょこんと座る小さな姿。
傍らに松葉杖を立て掛け、真剣な顔で何かを考えてる。
この時間だと・・・学校の帰りって言うには遅い。
しかも、誰かと一緒かと思って周りをチラッと見回しても、そんな感じではない。
じゃあ、待ち合わせとか?
前にも偶然会った時は、お兄さんと待ち合わせだとか言ってたけど。
この辺だと待ち合わせにしたって車は停められないし、ここで待ち合わせなら家に帰れる距離だ。
なに、してるんだろ。
そんな事を考えながらも、自然と足が向かい出す。
偶然に出会うとか、前のも合わせて2回目。
1度なら偶然でも、2回目となれば・・・
それは必然とも言えるんだよ。
「こんな時間に、こんな所でひとり?」
何の躊躇いもなく、オレは紡ちゃんに声を掛けた。
『及川・・・先輩・・・』
驚きながらも顔を上げ、声を掛けたのがオレだと分かると、それはそれで驚かれた。
『こんな所で、何してるんですか?』
「それはオレのセリフ!紡ちゃんこそ、何してたの?」
『私は別に、ちょっと考え事です』
考え事、ねぇ。
「もしかして、オレの事だったりして~」
『違います』
即答?!
ちょっとふざけてみただけなのに、自滅しちゃいそうな返答・・・
「紡ちゃん・・・そこは、う~んどうかなぁ~位に濁して欲しかったよ。即答で違うとか、及川さんガラスハートだから泣いちゃう」
『防弾ガラスですか?』
笑いながら言われ、オレも笑ってしまう。