第27章 小さな太陽と大きな背中
その時は、それがどういう意味なのか分からなったけど。
・・・私に、似てる?
私も、自分から・・・自分の意思で、バレーから離れた・・・
その理由は。
バレーを離れた理由を思い返し、胸の奥が痺れてくる。
頑張って下さいと、背中を押すように笑って別れの理由を無理やり飲み込んで。
その後、壊れてしまいそうになるほど泣いた。
何度も何度も後悔して、でも、覆ることのない結果に・・・自分を責めた。
バレーに関わる事が息苦しくなって、徐々に距離を置いて、そのうち現実から逃げる様にボール自体にも触れなくなってしまったのは、私の心の弱さで。
ー 見かけによらずガラスハートだ ー
ー 乗り越えられる壁なのに、足踏みをして目を背けてるだけだ ー
ガラスハートって・・・そういう事だったんだ。
そこに菅原先輩から聞いた話が、繋がる。
何度もスパイクを止められて、トスを呼ばなくなった・・・とも言ってた。
執拗にチェックされて止められ続けたスパイカーの1球。
打ち込む度に、何度も・・・何度も・・・
コートの中のメンバーからも、ベンチのメンバーからも期待されて、頼りにされていた1球。
それを止められて続けて、トスを呼ばなくなっ・・・た?
・・・違う!
呼ばなくなったんじゃなくて。
きっとそれは、呼べなかったんだ!!
セッターはスパイカーへの信頼を乗せてトスを上げる。
だけど東峰先輩は自分にトスが上がっても、スパイクは決まらなくて。
得点にも絡めなかった。
だったら、トスは・・・上げなくていい、とか?
澤村先輩が言っていた、乗り越えられる壁なのにって言うのも、きっとそれだと思う。
・・・それだったら、東峰先輩がバレーから遠ざかってる気持ちが少しだけ分かる気がする。
戻りたい気持ちを、目の前にそびえ立つ壁の1部に囚われていて表に出せないのかも知れない。
だからあの時、私が訊ねた事に曖昧な返事だけを返したんだ・・・
よし、粗方の考えはまとまった。
後は家で続きをゆっくりと考えれば・・・
ー こんな時間に、こんな所でひとり? ー
声を掛けられ顔を上げると、そこにはよく知っている制服と・・・
よく知っている・・・笑顔で、私を見下ろす影があった。
『及川・・・先輩・・・』