第27章 小さな太陽と大きな背中
月「うるさい」
その言葉のすぐ後に、私の視界がクルッと動き自分の手足がブラリとしているのが見えた。
『あの、ちょっと?』
月「なに?ポチくらい僕でも抱えられるケド?・・・それとも、僕がそんなに非力だとでも思ってるワケ?」
ニヒルな笑みを浮かべ、そう言いながらスタスタと歩き出す。
『お、重たい、から・・・』
月「は?こんなのが重いとか、王様も大したことないんじゃない?むしろ、軽すぎる。ちゃんと食べてんのか疑問だけど」
いや、昨日の夜から食べては・・・ないんだけどね。
澤「月島?紡を抱えてどうした?」
月「あぁ、モップ掛けしようとしたら、なんか僕に抱き着いて来たんで」
澤「抱き・・・」
月島君・・・大事な部分、省かないで欲しいんだけど。
山「ツッキー!それじゃ城戸さんが変な人みたいじゃん!」
山口君・・・天然ボケでトドメ刺すの、やめようか。
山「澤村さん!城戸さんは立ちくらみ起こしてたんです!」
前言撤回!
山口君ナイス!!・・・とか、言ってる場合じゃない、かも。
そっと澤村先輩の顔を見れば、山口君の報告にピクリと眉を動かしていた。
澤「とりあえずは、わかった。で、紡?体調が悪いなら悪いで、早く言わないとだな、」
『元気です!私は元気!ちょっと、急に立ち上がったからクラクラしちゃっただけで、それで目の前に月島君がいたから・・・いた、から・・・?』
さっきの情景を思い出し、言葉に詰まる。
立ちくらみ起こした時、私ガッツリ月島君に・・・抱き着いてた状態・・・だよね?
背中、と言うか。
腰に回した腕に伝わって来た月島君の体のラインがふつふつと蘇る。
わっ、わわわわわわっ・・・
急に凄い恥ずかしい!
澤「顔が赤い?まさか熱でもあるのか?」
月「・・・さっきまでは青白い顔でしたケド?」
顔が何色かだなんて、この際どうでもいいよ・・・
重要なのは、その前だよ。
私は月島君に解放してもらった後、暫く落ち着くまでへたり込んでいた。