第27章 小さな太陽と大きな背中
慧「お前、オレに対して失礼な考えしてないか?」
・・・心も読めるのか?!
背筋がヒヤリとしながら、なんでもないよと答えながら階段を降りた。
慧「時間稼ぎして来るから、先に行ってろ」
リビングのドアを開けて、慧太にぃが私の背中を押した。
時間稼ぎ?
よく分からないと思いながら、私は目的の物を作る材料をいそいそと取り出して作り始めた。
マシュマロの甘い香りに、指先に訪れるふわふわの感触に・・・誘惑される。
・・・1個、だけなら。
・・・1個、位だったら。
慧「紡、時間は稼げる。桜太に風呂掃除を任命して来た・・・って、どした?」
リビングのドアを開けながら声を掛けてきた慧太にぃに驚き、マシュマロを落としてしまった。
『なんでもないよ、ちょっと驚いただけ』
・・・危ない危ない。
誘惑に負けるところだった。
ここでマシュマロなんて食べたら、夕飯抜いた意味がないよ。
慧「紡、お前なんで夕飯食べなかった?桜太も気にしてたけどよ。だいたいなぁ、飯作ったヤツが食わないとか、怪しいだろ?なんか盛ったか?」
落ちたマシュマロをゴミ箱に捨てながら、慧太にぃが私の顔を覗く。
『久々に学校行ったから、疲れただけだし。あと、何も盛ってないから。ほっといて』
慧「そう言われると、ほっとけないんだなぁ・・・オレは」
『じゃあ、ほっとかないで』
慧「あ、そう?じゃあ、ほっとかない」
『うわぁ、ウザ!もうアッチ行ってて!あ、やっぱ行かないで』
どっちだよ!と言って、慧太にぃがゲラゲラ笑い出した。
『だって、アレ届かないんだもん・・・』
普段なら踏み台を使えば届くものも、今はそれが出来ない足だから、私の代わりに取って貰う。
慧「はいよ。これでいいのか?」
『ありがとう。慧太にぃはいくつ?』
瓶のフタを開けながら、特別な時だけ使うハート型のカラフルな砂糖を小皿に出して行く。
慧「オレ?・・・いくつ見えますぅ?」
・・・・・・・・・。
『いらないってコトね』
慧「待て~い!」
出しかけた物を瓶に戻そうとすると、慌てて手首を掴まれた。
慧「営業トークだっつーの!・・・2個でお願いします」
『・・・2個ね』
小皿に2個ずつハート型の砂糖を乗せて、後はコーヒーを落とすだけ・・・の所でリビングのドアが開けられた。