第27章 小さな太陽と大きな背中
息も絶え絶えに言えば、拗ねてそんな事を言う。
オレなんて言われ慣れちまって、今なんかそれが楽しくて仕方ないっつーのに。
こんな桜太は滅多に見れねぇ・・・
だったら。
「桜太?慧太サマがいい事を教えてやろう」
桜「いい事って?」
あ、そこは食いつく感じ?
桜太の座るソファーの背もたれに腰掛け、ならば教えてやろう!と胸を張って見せた。
「オレは紡を病院から連れて帰る途中で・・・」
桜「途中で、なんだよ」
「大好き!って、言われたぞ?」
桜「な・・・なぜだ・・・」
ひと言だけ漏らして、桜太がソファーに倒れ込んだ。
「ハッハッハ~!形勢逆転だな?ア・ニ・キ」
ニヤリと笑いながら桜太の肩を叩いてやる。
桜「俺もう今日は立ち直れない・・・」
そう言って桜太はクッションを抱えて顔を伏せた。
あ~・・・ちと、イジメ過ぎたか?
かなり重症だな。
仕方ねぇなぁ・・・ここは何とかしてやるか。
「ま、桜太はシャワーでも浴びて来いよ?飯の支度はやっとくから、出て来たら食おうぜ?」
桜「・・・精神疲労が多過ぎて、食欲ない」
うわ・・・こりゃマジでヤバイやつだな。
「あっそ。紡が作ったのに食べないとか、更に嫌われんぞ?・・・いーんだな?」
こみ上げる笑いを堪えながら、ぺチンと桜太の頭を叩いた。
桜「・・・シャワー、浴びて来る」
意外と単純か?!
モソモソと動き出す桜太を見送ってから、オレはコッソリとリビングを後にした。
まったくウチの兄貴様はしょうがねぇなぁ。
弱点は紡ってのは、前々から分かってる事だけどよ。
まさか、ここまでとは・・・
さっきの姿を思い出し、こみ上げた笑いで1度腰を折る。
ヤベェ・・・しばらくコレで楽しい毎日が送れそうだ。
ニヤつく口元を擦りながら、オレは紡の部屋をノックした。