第27章 小さな太陽と大きな背中
~慧太side~
桜太が紡の様子を見に行ってから、だいぶ経つけど。
何やってんだ?
救急箱を抱えて行ったから、何かあれば応急的な事は心配ないケドよ。
なんせアイツ、医者だし。
ウッドデッキでの一服を終えて、灰皿に水をかける。
パンイチで桜太にうるさく言われたからTシャツだけ着といたけど、またうるさく言われたらメンドクセーから下も履いとくか。
シャワーの前に放り出しといた部屋着をソファーから取り、とりあえず履く。
戻って来たら食えるように、先にスープでも温め直して・・・
そう思い立ちキッチンへ入ったところに、桜太がリビングに戻って来た。
「紡はどうだった?」
声をかけても返答はなく、聞こえなかったのか?と桜太を振り返り、驚いた。
「桜太、何かあったのか?」
桜「紡は・・・元気だったけど・・・」
言いながら救急箱をしまい、そのまま大きなため息を吐く。
なんだァ?
帰ってきた時も疲れ切ってた感じはあったけど、今はそれ以上に。
ズバリ!・・・死相が出てる。
「喧嘩でもしたのかよ?」
桜「いや、そういう事じゃない」
歯切れが悪いな。
加熱を止めて、桜太の方に体を向ける。
既に桜太はソファーに座り込み、微動だにしない。
「いったい何だってんだ?」
桜「紡が・・・」
「紡が?」
桜「・・・桜太にぃ嫌い!って」
・・・・・・・・・は?
「そんだけ?」
桜「大事件だよ・・・俺には」
・・・・・・。
「プッ・・・アッハハハハハハッ!!!!」
桜太が・・・あの桜太がっ!!
紡に1回嫌いって言われただけなのに・・・こ、こんな?!
ヤベェ・・・激面白すぎる!!
笑い過ぎて力が抜け、キッチンカウンターへと寄りかかった。
桜「笑い事じゃないから!」
いや!大笑い事だろ!!
「そんくらいで死相が出るほど落ちてんじゃねーよ!!オレなんか紡に年中言われてんぞ」
桜「それは慧太が必要以上に構うからだろ・・・俺は正面切って嫌いって言われた上に・・・部屋から押し出されて・・・鍵まで・・・」
鍵まで閉められたとか・・・だ、ダメだ!
笑い死ぬ!!
桜「慧太、そろそろ怒るよ」
「お前こそ、オレを笑い死にさせる気かっ!」
桜「・・・そのまま死んどけよ」
「おーい、仮にも医者がなんつー事を」
桜「うるさい」