第27章 小さな太陽と大きな背中
「そうじゃなくて、」
『西谷先輩のタオルがどれか分からなかったから、私の持って来ました。だから、使って下さい』
「それなら、」
シャツで適当に拭けばいい、そう思って受け取ったタオルをそのまま返そうと前に出した。
『使って下さい』
にこりと笑いながら、オレを真っ直ぐに見つめる目は・・・・・・・・・・・・笑って、ない。
「サ、サンキュ・・・」
『西谷先輩は・・・エースがお嫌いですか?』
タオルを顔に当てていると、不意にそんな事を言い出した。
「・・・別に」
『じゃ、バレーは?』
なんで、そんなこと急に聞くんだ?
「嫌いだったら、ここには来てないだろ」
ぶっきらぼうに答えてやると、ですよねぇ、と、笑っている。
『じゃ、もう1回聞きますね?・・・烏野のエースはお好きですか?』
烏野の、エース・・・
「嫌い、なんかじゃねぇよ」
ただ・・・今ここにいない事が、許せねぇだけだ。
『西谷先輩?何も知らない私なんかが言える立場じゃないですけど、もう少しだけ・・・待ってみませんか?』
「これ以上、どう待てって言うんだよ」
もう少ししたら、夏の大会だって始まる。
それを分かってるハズなのに、来ないんだ。
『それでも、です。何があったのかとか、私には分かりません。でも、何となく・・・もう少ししたら・・・』
「オレにはもう、関係ない・・・コレ、ありがとな。洗って返すから」
『あ、西谷先輩?!』
それ以上いたら、オレのモヤモヤを投げつけてしまいそうだったから。
呼び止められるのも振り切るように、その場を離れた。