第27章 小さな太陽と大きな背中
~西谷side~
菅「えっ?烏野の・・・エースの事を知りたい?」
スガさんの言葉に、ピクリと反応してしまう。
『はい。実は日向君からチラッと聞いたんで・・・私も正式にマネージャーになったから、部員の事をちゃんと把握したいなって思って』
そう、か。
まだ知らなかったのか・・・あの人の事を・・・
菅「確かに、居ることは居るんだけど・・・」
『ケガとかですか?・・・でも、ケガなら大地さんがずっと休んでいるのにカミナリ落とさないのも仕方ないですよね・・・私もだったし』
菅「あ、いや、紡ちゃんみたいなケガとは少し・・・違うんだけどね。ただ、もう少しだけ・・・待ってて欲しい・・・」
曖昧に説明をするスガさんにイラついて、オレは2人の所へと歩いて行った。
「スガさん!ハッキリ言ってやればいいじゃないですか!エースはここにはいない・・・烏野にエースなんかいないんだって!」
菅「西谷・・・」
「どれだけ言ったって部活にも来ない。そんなヤル気がないヤツの事なんか・・・改めて説明する必要なんかない!」
田「ノヤ!・・・お前、自分が何言ってんのか分かってんのか?!」
そんな事、言われなくても分かってる。
だけど、オレがどれだけ声をかけても、あの人は・・・来なかったんだ。
「おい、紡!」
『あ、はい!え?・・・紡?!』
「なんだ?お前の名前、違ったか?」
『合ってますけど、急に名前で呼ばれたので・・・ちょっとビックリしました』
大地さんやスガさんが名前呼びしてるから、そう呼べばいいのかと思ったけど、違うのか?
「まぁ、いい。紡、うちのエースの話はもうすんじゃねぇ・・・それだけだ」
田「ノヤっさん・・・」
「顔、洗って来る」
気まずい空気を残して、オレはその場を後にした。
水道から流れ出る水を見ながら、旭さんの事を考える。
あれからもう、1ヶ月だぞ?
何で来ないんだよ。
オレだって、謹慎から復帰したら旭さんがいると思ってたのに!
クソッ・・・
無心にもなれ切れず、ただ憤りを感じながらジャバジャバと顔を洗う。
肺が空になる勢いで、思い切りため息を吐いた。
『どうぞ?』
横から差し出されたタオルを受け取って、ハートを抱えたウサギのプリントと目が合う。
「オレのじゃねぇ・・・」
『私のです。まだ使ってないからキレイですよ?』
