第27章 小さな太陽と大きな背中
『じゃあ、逆に申し訳ないです。初めてのお弁当が、私なんかで。もっと他にいい人がいたかもなのに』
澤「え?あ、そのへんは大丈夫。充分、幸せいっぱいな感じだから」
そうですか?それなら良かったと返しながら澤村先輩がそう言った意味を私はよく分かっていなかった。
ひとつひとつを嬉々として食べてくれる澤村先輩は、どれを食べても美味しいねと言ってくれて、きっと本人が気づいていないだけで実際は
密かに・・・と言うのは失礼かも知れないけど、女子の心を掴んでいるのでは?とも思えた。
澤「ご馳走様でした。あ、忘れるとこだった。コレ、良かったら飲んでね」
はい、と、手渡されたのは、私もよく飲んでいたミルクティーのペットボトル。
『いいんですか?』
澤「お弁当のお礼・・・という訳ではないけど、どうぞ」
ありがとうございますと素直に受け取り、放課後の部活の時に飲みますね!と付け加えた。
澤「放課後?!え?」
『ダメですか?』
澤「いや・・・そうじゃなくて。えっ・・・と?」
『今日・・・大事なお話がある、って言ったのは、実はこれの事なんです』
そう言って鞄の中からプリントを1枚取り出し、澤村先輩に見せた。
澤「入部・・・届・・・?え?・・・えっ?!」
『本来は顧問の先生に提出する物なので、武田先生にお渡しするのが当然なんですけど・・・それより先に大地さんにお見せした方がいいかな?という、私の勝手な判断です』
澤「ホントに・・・?」
『ホントです。っていうか、正直な所・・・最後の最後まで、迷いました。でも、入院中ずっと何か考え事をする時に、浮かんで来るのは・・・みなさんの事だったんです』
澤「俺達の?」
澤村先輩の言葉にひとつ頷き、笑う。
『はい。時計を見ては、今から部活が始まるなぁとか、そろそろ休憩時間かな?とか。月島君は、ちゃんとドリンクを飲んでるだろうか?とか。それに、清水先輩はこの時間は洗濯機回してるだろうなとか、いつも・・・部活の事ばっかり』
私は話を聞きながら、澤村先輩は何度も何度入部届を見ていた。
澤「最後まで迷ったって言ってたけど、決め手になったのは?」
『それは、大地さんの言葉です』
澤「・・・俺の?」
『俺達と一緒に、全力で突っ走って行くってのはダメかな?って。私の未来、少しだけ俺に預けてみない?って』
