第26章 交差する想い
母「最近、力がやたら身だしなみに気を使ってると思ったら・・・ふ~ん・・・そっかぁ、なるほどねぇ」
「なに?ニヤニヤして気持ち悪いんだけど。しかも身だしなみって・・・俺はいつも変わらないだろ」
母「寝癖が直らない~!とか言って、いつまでも朝からドライヤーかけたりしてたじゃない?・・・力に彼女が出来てたなんて。お母さんもついてくから紹介しなさいよ」
・・・は?
「バッカじゃないの!まだ彼女とかじゃないし!いちいちうるさいよ!」
母「・・・まだ?じゃあこれから彼女にするの?ねぇねぇ?」
「だから!そんなんじゃないってーの!」
祖父「力、女ってぇのはな?少しばかり強引にされるとコロッと気が向くモンだ。俺が若い頃は、ばあちゃんを強引に誘ったりして・・・なぁ、ばあちゃん?」
祖母「そうでしたねえ・・・」
・・・そんな化石時代の話はどうでもいいから。
「とりあえず、俺行くから」
祖父「力・・・チューぐらいして来いよ?」
「するかっ!!」
ニヤつく連中を一括して、いそいそと部屋から出る。
まったく・・・母さんといい、うちの身内はどうなってんだ。
寝癖くらい、誰だって普通直すだろ。
寝癖?
急にソレが気になり、通りかかったトイレで身なりを確認する。
よし、大丈夫。
・・・っていうか、何してんだよ俺。
母さん達の毒にやられてる。
自分の行動を鼻で笑い、城戸さんのいる病室まで来た。
何となく緊張しながら、控えめなノックをしてみると、どうぞ?の返事の代わりに叫び声が・・・
『あぁもう!退屈過ぎる!!』
タイミングが良すぎる叫びに、俺は吹き出してしまった。
『だ、だれ?!』
ドアの向こうからの声に、俺はコホンとひとつ咳払いをして、ゆっくりとドアを、開ける。
「こんにちは、元気な患者さん?」
『縁下先輩?!・・・どうしたんですか?!えっ?あれっ?!部活は?!』
さっきの叫びと並ぶくらいの元気な声に、俺は笑いながらもここへ来るまでの経緯を話した。
じいちゃんのギックリ腰の事を話すと、城戸さんも自分も似たようなものだから・・・と足を指差して苦笑した。
『そう言えば縁下先輩?部活はお休みしたんですか?』
「ん?これから行くよ?大地さんに事情を説明して、城戸さんの所も寄ってくるって言ったら了承貰ってるしね」