第26章 交差する想い
『じゃあ、早く学校戻った方が・・・』
そんな顔して言われても、じゃあ帰るよ?なんて言えないだろ。
ちょっと寂しそうな顔は・・・自覚、ないだろうけど。
「大丈夫だよ。大地さんに退屈してるだろうから、少し話し相手もして来てって言われてるし。それに・・・案の定、退屈してたみたいだし?」
さっきの叫びを思い出し、笑いがこみ上げる。
『あの・・・さっきのは忘れて貰えると・・・退屈過ぎて心の叫びが出ただけですから』
「でも、退屈してたのは本当だろ?」
『はい・・・まぁ・・・武田先生から届けられた課題も終わってしまって』
「課題?」
『はい。病気入院ではないので預かってきましたよって武田先生から渡されたんです』
城戸さんがちょんっと指差す場所に目線を移した。
「もし良かったら間違い探し、してあげるよ?」
『本当ですか?!それは嬉しいです。私ちょっとだけ、数学苦手な所あるので』
「いいよ、分からないところがあるなら教えてあげられるかもだからね」
さすがに1年生の課題だから、俺だって教えてあげられると思うしね。
どれから見ようか?なんて言っていると、数学の課題を手渡された。
『ここ、なんですけど。授業ではまだやってなかった所なので、どうかな?って』
なるほど、証明かぁ。
女の子って、証明が苦手な子が多いんだよね。
でも、俺はこういうの苦手ではないから大丈夫。
城戸さんは少し緊張しながらも、真剣な眼差し問題を見る俺の顔をずっと見ていた。
だけど、少し見過ぎ・・・じゃないか?
「・・・あの、さ?」
『はい?』
「そんなに見つめられると、俺が照れるっていうか・・・」
ほんのり熱くなる顔を伏せ、ひとつの問題を指した。
「ここ、答えはあってるんだけどね?途中の数式が違うよ?」
『えっ?!あれ?この公式でいいかな?って思ったんですけど・・・』
指差された問題を覗き、う~ん・・・と首を傾げた。
前にも思ったけど・・・こういう女の子の仕草って可愛いよなぁ。
特に城戸さんは、計算してやってるんじゃなくて・・・こう、なんて言うか?
無邪気な感じで、懐っこいっていうか。
影山は毎日、こんな城戸さんと登下校してるのか?
それは、ちょっと・・・羨ましい、かも・・
俺はだいたい木下と成田と男3人肩を並べて・・・だし。