第26章 交差する想い
~縁下side~
朝起きると母さんに、じいちゃんが明け方に体が動かないって理由で入院したと聞かされた。
だから、学校終わったら病院に顔出せとも言われた。
で、話が長い母さんの言葉を遮って、朝練に遅れそうだからと、とりあえず病院名を聞いて体育館まで来た。
ちょうど大地さんとスガさんが鍵を開けた所だったから、母さんから聞いた話を伝えて病院名を告げて、放課後少し遅れて練習に入る事も伝えたんだけど・・・
菅「その病院って、紡ちゃんがいる所じゃないか!」
「あ、やっぱりそうですよね。俺もそうかな?って思ったんです」
澤「縁下。もし時間があれば・・・なんだけど、紡の所にも顔出せるか?きっと退屈してるだろうから、少し話し相手になってやってくれ。それなら多少の遅刻は目を瞑るから。おじいさんも心配だしな」
「それは構いませんけど・・・俺が話し相手で、返って退屈しませんかね?」
影山や日向みたいに直接的によく会話をする訳ではないし、もちろん、田中みたいにあだ名を付けて呼んでる訳でもない。
いったい何を話せば・・・
いや。
でもこれはある意味・・・ちょっと仲良くなるチャンス?
待て待て待て、相手は怪我人だぞ?
なのに俺はなんで、タナボタ的な事を考えてるんだ?
だけど、マンツーでゆっくり話す事なんて部活の間は・・・まず、ないしなぁ。
菅「縁下!お前を男と見込んで頼みがある!」
「改めて見込まれなくても、ちゃんと男ですけど・・・その頼みってのはなんです?」
俺がそう答えると、急にスガさんが目をキラキラと輝かせ始める。
菅「紡ちゃんにさ、オレからの熱いハグを届けてくれ!」
「・・・・・・はぃ?」
どういう意味だ?
菅「だからさ?オレが今から縁下をギューッってするから、縁下が紡ちゃんのとこ行ったら・・・それを届けてよ?」
スガさんが俺をハグして・・・
・・・スガさんが?
俺を?
・・・俺、を?
「はぁっ?!い、嫌ですよ!」
百万歩譲って、スガさんからハグされるのは我慢出来る・・・かも知れない。
・・・嫌だけど。
でも、それを届けるって事は!
俺が城戸さんをハグして来いって事だろ?!
出来るわけない!!!!
菅「まぁまぁ、そう言わずにさぁ~!頼むって!」
両手を広げてジリジリと迫ってくるスガさんに、俺は1歩、2歩と後ずさる。
