第26章 交差する想い
縁「答えはあってるから不思議だけど、ね?この場合はこの公式をあてはめるんじゃなくて、こっちを使うといいよ」
言いながらペンとメモ用紙を取り出し、スラスラと公式や数字を書いてくれる。
縁「ほら、ね?こっちの方が楽に計算できるでしょ?」
縁下先輩ってキレイな字だなぁ・・・
思わず身を乗り出して見ていると、そんなにまじまじと見なくても・・・と苦笑された。
『いえ、公式・・・もそうなんですけど。縁下先輩ってキレイな字を書くんだなぁって。たくさん勉強してる証拠ですね・・・』
縁「それを言ったら城戸さんだって凄くキレイに書いてるから、勉強してるってことだよね?」
『私はあんまり勉強してる訳じゃないので・・・中学時代は、それこそバレーボールばっかりでしたし』
バレーがやりたいから、勉強は学校のだけだったし。
塾とかだって、受験の時だけだった。
念の為・・・的な感じで。
縁「あんまり勉強してないとか言う割には、成績優秀で知名人じゃないか」
『そんな事ないですって。これからもいろいろ教えて下さい、縁下先生?』
縁「先生はやめろって」
静かな部屋に、私たちの笑いが響いた。
縁「さてと、城戸さんの元気な笑顔も見れたし
・・・あ!忘れるところだった!」
そう言って縁下先輩は立ち上がり、なぜか赤くなりながらも私に近寄ってくる。
『な、何でしょう・・・?』
縁「スガさんから頼まれたんだよ。だから、その・・・決して俺の意志じゃないからね!って事で、はい!ギュー」
『え?えぇっ?!』
両手を広げて、縁下先輩が私を抱きしめる。
あまりに急な出来事に、無抵抗のまま固まってしまった。
縁「・・・スガさんが、ここへ来たら自分の代わりにハグを届けて来いって。で、スガさんが俺を1回ギューって・・・」
菅原先輩が?
縁下先輩を・・・ギュー・・・?
『・・・・・・・・・』
縁「いま、想像しただろ?」
はい・・・ちょっと・・・想像しちゃいました。
・・・とは言えない。
縁「いきなりスガさんにハグされた俺の驚きも分かってくれよ・・・」
『・・・ですよね。だけど、それをちゃんと実行するあたり、縁下先輩は真面目なんですね』
そう言って腕の中で、縁下先輩を見上げる。
縁「あっ!こ、このくらいで良いよね?ね?」