第26章 交差する想い
「・・・わかった。ただし、条件がある」
岩「条件?」
「紡と・・・これっきりなんて、思うのはやめる事、かな?・・・もし違ったらゴメン。でも、本当はまだ・・・」
好きなんじゃないのか?
そう言おうとして、先の言葉が出ない事に動揺している自分がいる。
それを本人の言葉で聞いてしまったら、俺はどんな顔をしたらいいのかも・・・わからない。
岩「・・・勘繰りすぎだ。例えもしそうだとしても、俺達は既に・・・先輩、後輩に戻ってる。心配すんな。それから、今日アイツと約束した事があるのを、アンタに話しておくよ」
約束した事がある?
岩「駅前通りの雑貨屋、知ってるか?」
「あぁ、あのいかにも女の子が好きそうな・・・キラキラ、フワフワした感じの・・・」
あの髪留めを買った店だな。
岩「ケガが治ったら、昔1度も一緒に入れなかったから連れて行けって。だから、そこは・・・悪いと思ったが約束した」
「なんで今まで、一緒に行かなかったんだ?」
岩「男があんなキラキラしてトコ入れっかよ!!・・・あ、悪い、俺が言うと、及川に言うのと同じ勢いで言っちまった」
数秒の間を開けて、俺達は同時に笑い出した。
「いいんじゃない?仲良しの後輩と行くんだから、誰かの許可なんて・・・いらないだろ?もちろん、同じ条件で俺も行くかもだし?」
岩「じゃあ、3人でだな?」
「なんで3人なんだ?」
岩「同じ条件って・・・ぁ・・・いまのは忘れろ」
こういう所、紡と似てるな。
似たもの同士って、やつなのか。
しっかりしているようで、たまにこんな勘違いをやらかす所とか。
よく、似てる。
岩「なぁ、こんな時に言うのは変かも知れねぇが、連絡先・・・」
「俺は大歓迎だよ。天下の青葉城西のバレー部員と連絡先の交換なんて、早々出来るもんじゃないから」
言いながらスマホを出し、お互いの連絡先を交換した。
岩「お互い、何かあれば・・・合同練習でも、練習試合でも。それ以外でも」
「そんな恐れ多いお願いなんか出来ないだろ。うちは・・・その・・・」
岩「飛べない烏・・・か?」
不意にかけられた言葉に俺は頷いた。
この街で、誰もが知っている烏野の異名。
まだ、道のりは長そうだけど・・・
「俺は、その異名を返上したいと思ってる。先はまだ、分からないけどね」