第26章 交差する想い
~澤村side~
俺の目の前で、紡を頼むと頭を下げられた。
なぜ、俺に?
そんな疑問と共に、戸惑う気持ちも隠せないでいた。
「頭を、あげてくれよ・・・頼むから。じゃないと、俺達・・・対等に話が出来ないだろ?」
そう告げて何とか頭を上げてもらい、隣に座るように促した。
「俺は、2人の過去の事は・・・全部じゃないけど紡から聞いて知ってる。それは俺だけじゃなくて、影山も、さっきいた菅原と3人で聞いた話だ・・・どういう経緯か、話した方がいいよな?」
岩「・・・いや、込み入った話なら俺は聞かない方がいいんじゃないのか?」
隣に座り少し目線を落としたままで、そう返してくる。
「込み入った話、とまでは行かないかもしれないけど、俺は聞いてもらった方がいいかなと、思うんだけど?どうかな?」
岩「そっか・・・なら、話してくれ」
その返答を聞いた、俺は初めて体育館に紡が現れた時の事から、今日までの事を岩泉に話した。
俺の話を聞かながら、相槌を打ちながら時には笑い、時には驚き、そして、時々・・・切なそうに目を伏せていた。
「昨日、紡がバレーやってたのを知ってるなら、どうしてマネージャーなんかやらせてるんだ?って言ったよね?」
岩「あぁ。あれも、棘のある言い方をして悪かったと思ってるよ」
「いや、それはいいんだ。実はさ、紡にも同じ事を聞かれたから。バレーやってたのを知っていて、どうして女子部に突き出さないんだ?ってね」
岩「アイツが?」
大きく瞬きをして、俺の顔を覗く。
「女子部はそれほど強い訳でもなく、部員数もギリギリで、自分みたいな経験者がいたら勧誘に走る筈だ。なのに、そこに突き出したりしないのはどうしてなんだって。真っ正面からね」
その時の事を、まだそれほど経っていないのに懐かしいと感じて笑ってしまう。
「ある意味、あんな可愛らしい見た目してるのに俺達より男前だよ。堂々とした姿勢で先輩にもハッキリと物が言えるし、同学年の部員にも同等の立場で諭すし。俺なんかお役御免みたいな時さえあるよ」
岩「その状況が目に浮かぶな。でも、脆い時はすぐに崩れるんだよ・・・アイツ。だから、そういう時は・・・アイツを支えてやってくれ」
「その役目は、俺でいいのか?本当なら、」
岩「俺には出来ないんだよ・・・もう、な。だから、頼む・・・」
