第26章 交差する想い
~岩泉side~
「会いには行ったが、その・・・心配するような事は、なかったから」
気持ちがグラついて、あわや・・・の所までは・・・あったが。
でも、及川からの着信で未遂に終わったなら、敢えて言う必要も、ないだろ。
せっかく大事にされているのに、紡を悲しませる事はしたくない。
澤「ひとつ、俺から聞いても?」
俺の言葉に長い間、何かを考え込んでいた澤村がようやく口を開いたのはそんな言葉だった。
「あぁ。答えられることなら、答える」
何を聞かれても、いま俺が話せる事は話す。
その為の、この、今の時間だ。
澤「今でも大事だと・・・思ってる?」
・・・?!
思わぬ問いかけに、小さく肩が跳ねる。
俺は・・・どう、答えればいいんだ。
澤「どう、かな?」
暫く黙り込む俺を見て、催促するようにもう1度・・・言葉を投げてくる。
俺は・・・
「・・・今でも、大事だと思ってる」
俺の答えに、今度は澤村の肩が小さく跳ねた。
「ただ、勘違いはするな」
そうだ・・・これは・・・・・・
澤「勘違い?」
「大事な・・・後輩として、だ・・・」
俺の・・・ケジメだ。
「昼に、影山に電話して入院の事情を聞いた。その時、言われたよ」
澤「影山に?いったい何を?」
「もう、泣かせるな・・・って。俺が知らない所でアイツは一生分くらい泣いてるから、だからこれ以上は泣かせないって約束しろって」
澤「そんなことを、影山が・・・」
俺も、紡が泣くのは見たくない。
だから・・・
荷物をベンチに置き、俺は立ち上がった。
瞬きを繰り返す澤村の真向かいに立ち、ひとつ・・・小さく深呼吸をした。
澤「えっ、と?・・・なに、かな?」
「俺が言える事じゃないが・・・それでも」
澤「・・・・・・」
「紡を・・・頼む・・・」
そう言って俺は・・・頭を下げた。