第26章 交差する想い
「そしたら・・・?」
岩「及川に、殴られた」
「えっ?!殴られた?!」
穏やかではない内容に、思わず声が大きくなる。
それには岩泉も驚いて、俺に苦笑を向けた。
岩「黙ってたんだ、及川に。そしたら、去年のクリスマスに偶然アイツとあって、その事実を聞いたって家まで来て、責められて。で、殴られた」
「あの及川が・・・あ、いや、変な意味じゃなくて、だな」
慌てる俺を見て、及川が変なのは昔からだと笑う。
「でも、殴るってのは・・・穏やかじゃないなぁ」
岩「ま、仕方ない事だ。何度も何度も、大事なものは手放すなって言われ続けて、分かってると約束してたのに俺は・・・手放したんだからな」
「約束・・・」
岩「あぁ。それ以来、何かと俺は約束破りだ!と及川に言われ続けてる」
約束、か。
俺も、守ると約束したはずなのに、昨日・・・
岩「それから。今日・・・アイツに会って来た」
「そうか、紡の所に・・・・・・えぇっ?!」
自分の事をボンヤリと考えていたから、まさかの発言にさっきよりも更に驚きの声が大きく出た。
今日?!
紡のところに?!
いや、武田先生の話だと確か・・・違った?ような?
さすがにかなりの天然っぽい先生だって、この俺の目の前にいる人物と、あの1年を見間違えハズは・・・ないだろ?
待てよ・・・まさか・・・いいや!
どう見間違えたって、別人だろ!!
岩「何の断りもなく、すまなかったと思ってる」
驚きや戸惑いや、何かいろいろ動揺している俺を見て岩泉が謝ってくる。
「あ、いや・・・それは別に、いいんだけど」
岩「会いには行ったが、その・・・心配するような事は、なかったから」
そのひと言に、その表情に、俺は無意識に眉を寄せた。
心配するような、事?
それはどういう意味だ?
ケガの事は武田先生から聞いてるし。
だとすれば、だ。
消去法で可能性のあることを、ひとつずつ消して行く。
そして、残ったひとつは・・・
「ひとつ、俺から聞いても?」
岩「あぁ。答えられることなら、答える」
「今でも大事だと・・・思ってる?」
俺は・・・何を聞いてるんだと、自分でも思う。
だけど今、聞かずにはいられなかった。
「どう、かな?」
暫く黙り込むのを見て、催促するようにもう1度・・・言葉をかけた。