第26章 交差する想い
~澤村side~
岩「話って言うのは・・・つ、いや・・・城戸の事だ・・・」
そう言ったきり、ずっと黙ったままの岩泉は・・・どこか辛そうで、どこか切なそうな空気を漂わせていた。
話したいのは紡の事だ・・・そう言っていたが・・・
もしかして、やり直したいとか、そう言う相談か?
だったら、俺は何の役にも立たないと思うんだけど。
いや、そうじゃなくて。
そもそも、そういう類の相談は俺にはしないだろう。
昔からの知り合いでもないし、仲のいい友達とかでも、ない。
つい最近知り会って、今日イキナリ待ち伏せされてんだぞ?
待ち伏せってのは、少し語弊があるけど。
でも、連絡なしに待たれていた事に驚いたのは本当だ。
・・・しかし、この沈黙は、いったいどうしたらいいのか。
岩「アイツは・・・大事にされてるみたいだな」
「え?・・・あぁ、それはまぁ。声掛けたのは、俺だし。そんな粗雑には扱わないだろ」
何か声をかけようか迷った瞬間、岩泉が沈黙を破った。
岩「・・・そう、か」
「気にしている事は、その事か?」
岩「それもある。聞いてるんだろ?アイツから、俺達の事」
「あぁ・・・」
この流れでの、聞いているんだろうと言うのは恐らく・・・2人の、過去の事だろう。
そう思った俺は、何も聞き返すことなくそう返した。
岩「率直に、酷いヤツだと思っただろ?」
「少しは、ね。でも、どっちの気持ちも・・・俺は考えたよ。全てを投げ打ってでもという気持ちと、サポート役に回ってでも一緒にいたかったっていう思いと、両方」
それだけ2人とも、真剣だったんだな・・・とも。
岩「終わりを告げたのは俺なのに、その後・・・何度も後悔したよ。笑えるだろ?」
「そんな事は・・・ただ。どんな事があっても一緒に進むっていう選択肢は、なかったのか?とは、正直思った」
岩「あったよ。だが・・・ただでさえその日までバレーを優先して来て、これ以上はっていう引け目もあって。どこにも連れて行ってやれない、我慢ばかり、寂しい思いばかりの日々しか与えられないんなら、いっそ・・・って。そしたら・・・」
そこでまた、言葉が途切れた。
終わりになった理由が、嫌いになった、他に好きな人が出来たなら、どんなによかったか・・・
紡が泣きながら話してくれたことを思い出し、胸が苦しくなる。