第26章 交差する想い
『・・・確認の為に聞くけど・・・ちゃんと服、着たよね?』
・・・なんの確認してるんだよ、と言おうとして。
堪えきれずに吹き出してしまう。
ダメだ・・・面白すぎるよ、ポチ・・・
ひとしきり笑い、上は着てないけど下は履いてるからと答えた。
それから少しの間、ポチと何でもないような話を続けた。
今日の病院食の話。
課題の多さに驚いた話。
数学は嫌いじゃないけど、証明問題は苦手だという話。
「武田先生が進学クラスのヤツらより、成績優秀とか言ってたけど、苦手なモノあったんだ」
『成績優秀かどうかは分からないけど、証明問題は苦手・・・ほんと、困る。影山には聞けないし・・・』
だろうね・・・
「もし、暇があったらの仮定の話だけど。教えてあげてもいいケド?」
『ほんと?!凄く嬉しい!!約束ね、月島君!』
おっと・・・凄い食いつきの良さ。
母「蛍?お風呂出たならご飯食べちゃいなさいよ?」
そしてタイミングの悪い母さん・・・
『今の・・・月島君のお母さん?』
「そうだけど」
『そっか・・・お母さんがいるお家って、ちょっとだけ・・・羨ましいな。うちの両親は海外医療ボランティアにふたり仲良く行っちゃってるから』
「じゃあ、いつもあのハイスペックなお兄さんと二人暮らし?」
この前、山口のケガを見に来た時、ちょっとだけ見たけど。
『あ、正確には3人・・・かな?』
「3人って?」
『桜太にぃは、見たことあるでしょ?もう1人、桜太にぃと同じ顔した兄がいるの』
「あのハデな方もか」
へぇ、そうなのか。
あまり人と関わりを持たずにいる僕でさえ、少し驚いた。
そこから先は、兄雑談が始まり、笑い、妹や弟の立場って・・・なんて、僕とポチがそんな話をしたなんて山口あたりが聞いたらビックリするだろう話を、続けていた。
のに。
母「蛍~?もう、冷めちゃうじゃない・・・」
母さんがノックもなしに脱衣場のドアを開ける。
「いま行くから!勝手に開けるなよ」
母「まだそんな格好で・・・こんな所で誰と長電話してるのよ?・・・あっ!もしかして?!」
「は?いいから早く向こう行けって」
母「そういう態度はますます怪しい・・・彼女?ねぇねぇ蛍?彼女でしょ?」
「は、ぁっ?!違うから!」
母「はいはい、お邪魔虫は退散しますよぅ~だ」