第26章 交差する想い
~月島side~
部活が早めに終わり、いつもより早く家に着く。
母「蛍?お帰り。何かいつもより早い?」
「別に」
靴を脱ぎながら素っ気なく答え、鞄は廊下に置いたまま、とりあえずリビングへと入る。
母「はい、いつものね」
目の前に置かれたグラスには、普段から飲み慣れているレモン水が入れてある。
飲み慣れている、ハズなのに。
今日はいつもと違う物を飲んでる気がするのは、なぜだろう。
その答えは、僕が1番・・・分かってる。
母「妙な顔してるけど、何か変だった?いつもと同じ作り方だけど・・・」
「別に」
母「別にって、蛍はそればっかりね~。明光はそんな冷たくあしらったりしないのに」
軽く笑いながら兄ちゃんの名前を出され、飲み終えたグラスを音を立てて置いた。
「・・・兄ちゃんと僕は、違う人間だからね。一緒にされても困る」
母「またそんな風に・・・明光だって蛍のこと心配してるのよ?こないだも電話来たし」
心配?
そんなの、余計なお世話。
「兄ちゃんの話はもういいから・・・それよりコレって、作るの面倒?」
置いたグラスに指さして、どうやって作ってるのか聞いてみる。
母「レモン水の事?別に面倒とは思ってないけど、ちゃんと作ったら多少の手間はかかるかもね。でも蛍はコレしか飲まないし、毎日作り替えてるけど・・・」
「ちゃんとってなに?」
母「私は浄水器の水で作ってるけど、ちゃんとし作り方だったら水を1回沸かして、冷まして、それをもう1回お砂糖とか入れて沸かして、冷まして・・・かな?なんで?浄水器の水じゃダメ?」
「・・・別に」
母「また、別に・・・ですか」
「うるさいよ」
母「はいはい。蛍、ご飯食べる前にシャワー入っちゃいなさい?その間に支度しとくから」
「わかってるよ」
後ろ手にリビングのドアを閉め、軽く息を吐く。
・・・ポチが作ってくるのは、多分、そっちの方か。
飲んだ時の・・・口当たりが母さんのとは違った。
作り方を聞いただけで、僕は面倒だと思ったのに。
山口からレモン水と聞いてアレを作ってくるとか・・・ポチ、やるじゃん。
・・・僕のほんの気まぐれだけど。
褒めてやっても・・・いいか。
自分の部屋に入り、スマホを開く。
あ。
そう言えば、ポチの電話番号・・・みんなで交換したまま1度も・・・