第26章 交差する想い
桜「ホントは全問解けるまで居てあげたいけど・・・タイムリミットのようだから」
桜太にぃが言い終わると同時にドアがノックされ、年配の看護師さんがドアを開けた。
ー 城戸先生、一般の面会時間は終わりましたよ?妹さんが心配なのは分かりますけど、そろそろ、いいですか? ー
桜「すみません、いま出ますから」
そう言ったあと桜太にぃは耳元で、この人は厳しいからね、ちゃんと早く寝るんだよ?と言って笑った。
ー 城戸先生? ー
桜「わかってます。じゃ、紡?明日は休みだけど、顔は見に来るからね?」
いつものように頭をポンポンッと撫で、桜太にぃは看護師さんと部屋から出て行ってしまった。
課題の続き、やらなきゃね。
大きく伸びをしてから、1人の時間の寂しさを紛らわせるように、私はまた課題と向かい合わせになった。
数問解けた所で、時間を見ようとスマホを手にすると着信があった事に気付く。
今から10分も前?
誰だろうと思いながらかけてきた相手を確認する。
・・・月島君?
相手が相手だけに、かけ直すのもどうしようかと躊躇ってしまう。
でも、もしも急用だったら困る・・・よね?
そう思って、月島にかけ直してみる。
コール音が・・・
2回・・・3回・・・4回・・・出ない。
やっぱりたいした用事ではなかったのかな?
そう考えて通話を切ろうと耳からスマホを離した。
月 ーポチ、なに? ー
『えっ?!あ!出た?・・・も、もしもし月島君?!』
月 ー ポチうるさい。で、なに? ー
いや、何って言われても・・・ねぇ・・・
『えっと・・・月島君からの着信が残ってて・・・それで・・・』
月 ー あぁ。それ、間違ただけ ー
『え?・・・あ、そう・・・なんだ・・・』
誰かにかけようとして間違えただけか。
別に、何かを期待していた訳じゃない。
急用だったら困るからかけ直してみた、それだけの事。
なのに、それでも。
間違えただけってサラリと言われると、ちょっとだけ、寂しく思えてしまって・・・
『・・・違ったんなら、大丈夫。ごめんね?何か慌ただしくコール鳴らしちゃって・・・じゃ、切るね?』
月 ー・・・ウソ。ホントはポチにかけた。でも、出なかったから ー
『え?!あ、ごめんね?武田先生から渡された課題やってて・・・』