第26章 交差する想い
公園?
その公園は・・・
「わかった。そこにしよう」
今の俺には、いい・・・場所じゃねぇか。
また、2人で歩き出した。
今度は隣同士、肩を並べて。
ガタイのいい男が2人で歩けば、目的の場所には時間はかからずに着いた。
フッ・・・と息を吐き、公園の中をながめる。
・・・変わんねぇな、何も。
でも、変わらなきゃいけない物も・・・あるって事だ。
「・・・行こう。あ、待て。その前に」
ちょっと待ってろ、と声をかけて、俺は小銭を片手に自販機へ向かい一瞬選ぶのを迷ってボタンを押した。
「はいよ、スポーツドリンクはさっきまで飲んでただろ?だから・・・」
そう言って、冷たく冷えた缶コーヒーを渡した。
澤「あ、俺自分の分は・・・」
「いいって。今回は俺が時間作って貰ってんだし・・・また会うこともあるだろ?そん時に奢って貰うよ」
澤「そういう事なら、あ、と・・・ありがとう」
軽く缶を掲げて礼を言われる。
「とりあえず、どっか座って話そう。部活終わりだし、疲れてんだろ?」
澤「別にこれ位はいつもの練習量だし、たいした事ないから」
そう言って笑ってはいるが、疲れてないハズなんか・・・
「俺が座りたいんだよ」
俺はフッと息を漏らし、肩を軽く叩いて前に進んだ。
誰もいない公園を、ゆっくりと歩いて進む。
出来れば、知り合いなんか・・・特に通りがかりの及川なんかに見つからない場所がいい。
思い浮かぶ場所は・・・ひとつだった。
緩やかな坂を登りきった、小高い丘。
いくつかのベンチが並び・・・ここも、変わらねぇな。
苦い思い出に瞼を閉じてみると、あの日見た最後の紡の姿が浮かんだ。
長い髪を風に揺らし・・・最後の最後まで、笑っていた・・・紡。
俺も・・・前に進むから。
そしたら、同等にお前と笑い合える、だろ?
心の中で、あの日の紡にそう告げてベンチへと向かった。
「ここなら、静かに話せるだろ」
そう言って俺が先に座ると、少し間を開けて隣に腰を下ろした。
缶の口を開ける音が、やけに大きく響く。
そう思える自分に苦笑して、俺はひとくちコーヒーを飲んだ。
澤「それで、話っていうのは・・・?」
同じように缶に口を付けながら、俺の顔を覗く。
「あぁ、話って言うのは・・・つ、いや
城戸の事だ・・・」