第26章 交差する想い
~岩泉side~
及川達と別れ、俺はその足で烏野へと向かった。
この時間だったら、まだ間に合うだろ。
そう思いながらも、足を早める。
程なくして、烏野にはついた。
・・・が、他校生の、しかも制服姿の俺が中までは入れねぇ。
近くをブラつくにも、その間に入れ違ったらと思うとここから離れることも出来ねぇし。
・・・どうすっかなぁ。
最悪、影山に電話するにしても、アイツも練習してんだろうし。
ー なぁなぁ!さっきの大地さん、なんか変じゃなかったか? ー
大地・・・?
そういや、紡が主将の事をそう呼んでたな。
何となく、何も悪いことしてないのに身を隠す。
ー 田中、声デカイって。練習早く終わったからって元気あり余してんなよ、暑苦しいから ー
ー 暑苦しい・・・縁下、さり気なくオレをディスるなよ・・・ ー
・・・おとなしそうな顔して、なかなかの毒舌っぷりだな。
ウチで言ったら、国見みたいなタイプか。
ってより、あの坊主頭は確か・・・あのやたら叫ぶスパイカーじゃねぇか。
つーことは、バレー部の練習は既に終わっている?
アイツらが帰るって事は、もうみんな帰っちまったのか?
いや、待て。
主将は鍵閉めとかあんだろ?
じゃあ、待ってれば・・・会える、か?
ぞろぞろと門から出て行く集団が見えなくなるのを待って、門の柱に体を預けた。
10分、いや、15分待って来なければ帰るか。
そう決めて、軽く空を見上げる。
・・・あの時、及川から着信がなかったら。
俺は、何を考えてんだよ。
確かに俺はまだ、紡の事は・・・大切だと思ってる。
今の紡は・・・もう、俺の手から離れてる。
どんなに気持ちが煽られても、許されることではない。
だから・・・
だから、これは・・・
・・・俺なりのケジメだ。
グッと手を握り、紡の感触を遠ざける。
こっから先は、アイツは大事な後輩に・・・なるんだ。
影「岩泉さん・・・」
ジャリ・・・という音と影山の声で振り返る。
俺がいま、1番話をしたい相手も・・・そこに居た。
「・・・よう。ちょっと話がしたい」
言いながら背中を起こし、体を正面に向ける。
澤「俺と?」
軽く周りを見て、自分に言われていると気付き、俺にそう返してくる。
俺は数歩前に歩き、正面に立った。