第26章 交差する想い
武「まずは、清水さんのところへコレを届けてからにしましょうか」
「は・・・い?」
何となく2人で清水のいる水道場へ向かう。
そこで集めたスクイズを渡し、そのまま先生と体育館の端に移動した。
武「実は今日、僕が病院へ言った時に城戸さんからいろいろな話を聞いたんです」
「いろいろ・・・ですか?」
武「えぇ、いろいろ、です。僕は相談された側として守秘義務がありますから、内容については澤村君と言えどお話する事は出来ませんが・・・」
相談された?
って、何を?!
もしかしてこれ以上バレー部に関わりたくないから、どうしたらいいか?とか?!
もし、そんな事を相談されていたとしたら・・・
暑さとは別に、ひやりとした物が背中を伝う。
武「澤村君・・・そんなに怖い顔しなくてもいいですよ?」
「怖い顔・・・って。先生・・・」
武「とにかく、城戸さんはとても悩んでいたようでした。最後には笑ってくれましたが、僕はその笑顔を見て少し安心しましたが・・・」
悩む・・・じゃ、やっぱり・・・
「俺達と・・・一緒にはいられない・・・とか」
不安な言葉が、ついポツリと零れる。
武「あぁ、そういう事はないですよ。城戸さんは、みんなの事が大好きだって言ってましたから。もちろん、澤村君の事もね?」
「大好き・・・」
その言葉を聞いて、俺が言われた訳じゃないのに、急に顔が熱くなり慌てて肩口で拭ってみる。
武「ただ、僕はアドバイスとして・・・ですが。人間の不完全さと、それゆえの誤ちなどを城戸さんに話しました。そして、僕の恩師の言葉も、城戸さんにお裾分けして来たんです」
「どんな・・・言葉ですか?」
武「一緒にいて楽しいと思う人より、離れていて寂しいと思う人を選びなさい、と」
「まるで恋愛相談みたいな・・・えっ?!」
武田先生は紡からそんな事を相談されていたのか?!
思ったより衝撃が大きくて、思わず壁に手をついた。
武「澤村君?落ち着いて下さい。僕は人と人との関わりについて、この言葉を出したんです。そして、その答えを出す事が出来るのは城戸さん自身だとも」
「でもそれって結局・・・」
誰かが・・・いや・・・
紡が誰かを選ぶ時が来る・・・って事じゃないのか?
そして俺は、紡が離れていて寂しいと思う人物は・・・1人しかいない、と思った。