第26章 交差する想い
~澤村side~
「今日はここまで!全員片付けに入れ!」
「「ッス!!」」
いつもより少し早めに練習を切り上げる。
キリがいいから、って事も理由のひとつだが・・・
そしてもうひとつの理由は。
「清水、手伝うよ」
清「澤村?・・・大丈夫、今まではやってこれた事だから」
ひとり静かにスクイズボトルを集め出す清水に声をかけると、サラリと断られてしまう。
「スガ!俺は清水を手伝うから、そっち頼む!」
菅「オッケー!」
これでよし。
「向こうはスガに任せたから、俺はこっちやるよ」
有無を言わせない顔で言うと、清水は断るのを諦めたのかため息をついた。
・・・つくなよ、ため息。
清「じゃ、澤村のせっかくの申し出だからお願いする。私これを先に洗ってるから、残りを集めて来てくれる?」
「いいよ、行ってくる」
水道場に向かう清水の後ろ姿を見て、やっぱり紡の存在は大きかったんだな・・・と思う。
もちろんそう思ってるのは、清水や俺だけじゃない。
他のメンバーだって、きっとそうだ。
1年の4人は・・・特に。
日向は何となくカラ元気だし。
影山は一見変わらない様に見えても、それでも普段とは違った。
月島も影山と同じく・・・だけど、給水時間の時はスクイズに口を付けては、眉をひそめていた。
そして山口も・・・時折ボンヤリと手を見つめては、何度もため息をついていた。
・・・どうしたものか。
こういう時こそ、主将として何か声をかけるべきなんだろうけど・・・どう声をかけていいのかさえ思いつかない。
武「澤村君、僕もお手伝いします」
俺の足元に転がるスクイズボトルを拾いながら、武田先生が声をかけてきた。
「いや、さすがにそれは・・・」
武「大丈夫ですよ、これくらい・・・澤村君、君はいま、城戸さんの事を考えていたでしょう?」
「はっ?え、あ、その・・・あっ!」
予想もしなかった言葉に、バラバラとスクイズを落としてしまう。
武「正解、ですか?」
笑いながら落としたスクイズを拾い、先生は俺を覗く。
「・・・まぁ、はぃ・・・」
武「奇遇ですねぇ、僕も同じです」
ん?
先生も?!
「えっと・・・?」
先生も紡の事を考えていたって、いったいどういう事なんだ?
何とも言葉を返せないでいると、最後のひとつを拾い、先生がニコリと笑った。