第26章 交差する想い
桜「とにかく日本語が話せなくて、ずっと英語で俺を名指ししててね。みんな困ってたから対応に出たんだけど・・・フフッ・・・」
『何でそんなに笑ってるの?もしかして私、変な英語だったのかな・・・』
桜「そうじゃないよ。その人がさ、院内で迷ってたら親子連れに声をかけられてここまでの道順を教えてくれたって言うから。で、どんな人でしたか?って聞いたら、若い父親が車椅子に乗った小さな女の子を連れてた、お散歩に行くと言ってたって」
若いお父さん・・・?
小さな女の子?
桜「だから、もしかして?って思って武田先生の見た目と紡の見た目を話したら、そうだって言うし。小さな天使はとても上手にお話できたって」
『どうして親子連れに見えたんだろう・・・全然違うのに』
そう呟くと、桜太にぃは笑いながらもそれに答えてくれる。
桜「外国の人から見たら、日本人って実年齢よりも幼く見られる事が多いんだよ。それに加えて紡は小柄だから、余計にそう見えたんじゃないかな?」
なんか、色々と複雑・・・
若いお父さんと、小さな女の子。
武田先生が聞いたら、どんな顔をするのだろう。
きっと・・・凄く驚いて。
武「ええっ?!僕がお父さんですか?!」
なんて言うんだろうなぁ。
桜「楽しそうだね」
『ちょっとね』
言い合って、お互いに笑っていると突然ドアが開けられた。
ー おーたせんせー、やっぱりここにいたのか!ズルいぞせんせー、つむぐおねーちゃんといつもいっしょにいてさ。つむぐおねーちゃんはぼくのおよめさんなんだからね! ー
元気よく部屋に入り、私の事をお嫁さんと呼ぶ男の子は、今日仲良くなったばかりの小さな入院患者さんだ。
桜「ん~?じゃあ先生を倒す力は貯めてきたのかな?」
男の子と同じ目線になるように屈み、穏やかな笑顔で話をしている姿は、まるで小さい頃の私と話しているようでいろんな事を思い出させた。
ー それは・・・まだだけど。でもぼくのおよめさんなんだからね! ー
『桜太にぃ、何の話?』
話が読めずに、小声で桜太にぃに聞いてみる。
桜「内緒。男と男の、秘密の話。ね?」
ー うん!つむぐおねーちゃん、ぼくのおよめさんになるまでは、かれしとかダメだからね!いい? ー
『お嫁さんって・・・』
どう答えたらいいのか分からず、桜太にぃに助けを求めて視線を送る。
