第26章 交差する想い
武 ー 僕も城戸さんも同じ人間です。人間というのは不完全な生き物であり、そしてそれには気付かない。ゆえに、日々どこかで衝突があり、罪のある愛も芽生えてしまう事もあるでしょう。ですが、あなたが今、思い悩んでいるのは決して罪のある愛などではありません。選択肢が沢山あるだけです ー
『選択肢・・・ですか?』
武 ー えぇ、そうですよ?迷って、悩んで、その後に掴み取った選択肢が、例え間違っていても僕はいいと思います。間違える事、やり直すこと、どちらも正解なんです。だから今は、たくさん悩んで、たくさん迷いなさい。その経験が、これから先のあなたを強くして大きく成長する糧となるでしょうから ー
思い出せば思い出すほど、深い話だと思う。
それから武田先生は、ひとつだけアドバイスをしてあげるとか言って大事な言葉を分けてくれた。
武 ー 城戸さん?今から言う言葉は、僕が学生の頃に教わった先生からの言葉ですが、特別に城戸さんに分けてあげましょう ー
『そんな大切な言葉を分けて貰っても・・・いいんですか?』
私がそう言うと、先生はニコニコと笑って話を続けた。
武 ー 一緒にいて楽しいと思う人より、離れていて寂しいと思う人を探しなさい・・・これが僕の教わった先生からの言葉です ー
その後は、風が出てきましたねぇとか言って部屋に戻って来てしまったけど。
先生も帰ってしまって、ここに1人になった時に考えてみた。
一緒にいて楽しいと思う人は、たくさんいる。
だけど・・・
離れていて寂しいと思う人は・・・
桜「紡?大丈夫?」
『え?あ、うん、大丈夫。食べながら考え事なんて、お行儀悪いよね。ごめんなさい』
桜「別に怒ってるわけじゃないって。ただ、あまりにも真剣に考えてるみたいだったから、大丈夫?って」
『あー・・・武田先生の話を思い出してたの。いろんなお話が聞けたなぁって』
細かい事は桜太にぃには説明出来ないけど。
でも、武田先生の話を考えていたのは本当だし。
桜「そう言えばさ。俺が救急処置から戻ったらナースセンターが騒がしくなってて。何かと思ったら外国の男性が俺を名指して呼んでてさ」
外国の・・・
『あの人!ちゃんとここに来れたんだ・・・良かった!』
私がそう言うと、桜太にぃはやっぱり紡だったかって言って笑い出した。