第26章 交差する想い
武「城戸さんの事は僕がしっかり付き添いますから、どうぞ行ってあげて下さい」
武田先生が気を使って、少しでも早く患者さんの所へ・・・と促した。
桜「ホントにすみません・・・では、宜しくお願いします!」
言いながらドアを開け、そのまま飛び出すように桜太にぃは部屋から出て行ってしまった。
武「では城戸さん?僕とお散歩に行きましょうか?」
『・・・はい!お願いします!』
武田先生にゆっくりと車椅子を押され、ワクワクしながら病室を出る。
エレベーターを使って1階まで降り、慧太にぃといた朝とは違うざわめきを感じながら、流れる景色に心弾ませていた。
武「さすがこれだけ大きな病院ともなると、午後も人がたくさんいますね」
『そうですね。桜太にぃ、こんな大きな病院で働いてるなんて・・・改めて凄いなぁって思います』
武「そうですね。僕もそう思います」
ウンウン、と、頷きながら、武田先生も同意してくれた事がちょっぴり嬉しい。
『あの、武田先生?ホントにお散歩一緒にお願いしてもよかったんですか?・・・今更ですけど』
軽く振り返りながら聞くと、武田先生は大丈夫ですよ?と返してくれる。
武「それに、僕は城戸さんからのお話を、まだ聞いてあげられてませんから。どこか静かな所で、ゆっくりお話しましょうか」
『ありがとうございます。でも、先生?今のはちょっと、ナンパっぽい』
クスクスと笑い出すと武田先生も笑う。
武「そうか・・・そうやって誰かを誘ってお話すればいいのか・・・そしたら僕にもお嫁さんが・・・」
『あ、先生?、ちょっと?早まらないで下さいね?突然お話に誘ったりしたら怪しまれちゃう!』
慌てて止める私を見て、武田先生が笑い出した。
武「城戸さん?冗談ですよ?」
『冗談・・・もーっ!先生!ビックリしたじゃないですか!!』
武「お嫁さんなんて、のんびり探します。まぁ、そう言い続けて、いつの間にかこの歳になってしまいましたが・・・」
『・・・のんびりしてると、おじいちゃんになっちゃいますよ?』
それも僕の人生なのでしょう、と、武田先生は笑った。
武「一応、誤解のないように言っときますが、こう見えてもちゃんと彼女の1人や・・・1人はいましたからね」
1人だけだったのか・・・と思ったのは、とても失礼だなと思い、そのまま飲み込んだ。
