第26章 交差する想い
桜「だからね、紡?外に出たいって言われても、その足で、」
武「あの!車椅子で、と言うのはいかがです?僕が責任持ってお供しますから!」
武田先生ナイス!!
桜「しかし、武田先生も学校へ戻らないと部の事が・・・」
武「部の事なら心配ありませんよ?澤村君達がいますから。僕が体育館にいても指導することは出来ませんし、それに何かあれば彼らから連絡が来る手筈になってますから」
にこやかな笑顔でサクサクと話を進める武田先生に、桜太にぃは少し考え込んだ。
桜「同行者がいるなら・・・でも先生?紡のワガママに無理に付き合ったらダメですからね?」
武「分かってますよ?」
桜「紡も、先生に無理なお願いは絶対しない事。長く外にいるのもダメ。わかった?」
『桜太にぃ、ありがとう!』
両手を広げて、喜びながら桜太にぃにギュッと抱きついた。
桜「全く・・・俺も慧太に怒れなくなって来たよ」
桜太にぃはそう言いながら、枕元のナースコールを押した。
« はい、どうされましたか? »
桜「すみません城戸です」
« あら、城戸先生 »
桜「忙しいのに申し訳ないけど、病棟の車椅子って、空いてるのあるかな?もしあったらこの部屋お願いしたいんだけど・・・」
« 大丈夫・・・ですね、今お持ちします »
桜「お願いします」
プツッという音がして通信が切れ、程なくして看護師が車椅子を部屋まで届けてくれた。
ー お待たせしました城戸先生 ー
桜「ゴメンね、忙しいのに。後は俺がやるから大丈夫」
桜太にぃが言うと、看護師はニコリと笑顔を返して戻って行った。
桜太にぃに支えてもらいながら、車椅子に移動する。
念の為ね、と言われて大きめのタオルを掛けられた。
桜「よし。じゃ、紡?分かってるね?」
『分かってる。さすがに武田先生に無理なお願いはしないよ?』
桜「あのねぇ、これが既に無理なお願いのひとつなんだからね?」
そう釘を刺され、返す言葉を濁す。
桜「では武田先生、すみま、・・・ちょっと失礼します」
桜太にぃの持ってる院内電話が鳴り出し、会話が止まる。
桜「えっ?!あ、はい分かりました、すぐ行きますから、ネブライザーの用意をお願いします。いえ、すぐ行きますから先に診察します。はい。お願いします」
桜太にぃの真剣な表情に、緊急事態だという事が分かる。