第26章 交差する想い
武「で、ではせめて。後ろを向いてます。一応、僕からしたら教鞭を取っている学校の女生徒なのですから」
律儀だな・・・と思えた。
検温や血圧計測なんて一瞬で終わるのに。
ー はい、記録終わりです。城戸先生?こちらに残りますか? ー
桜「そうだね・・・少し学校の先生とお話もあるから、残るよ」
ー 分かりました。主任に居場所は伝えておきますね?では私はこれで ー
来た時と同じく静かにドアを閉めて看護師はナースセンターに戻って行った。
武「あの、僕にお話っていうのは?」
桜太にぃが言っていた事に、武田先生が姿勢を正しながらそう言った。
桜「えぇ、話というのは学校へ提出する書類の事です。さっき武田先生にお会いした時は、その書類を作成して貰えるようにお願いに行った帰りだったので」
桜太にぃは話しながら、胸ポケットから1通の封書を出し、中の書類を武田先生に見せた。
武「なるほど・・・診断書ですか。それは助かります。こちらからお願いする前に手配されていたとは・・・」
桜「紡は年齢の都合上、小児科に入院していますが、さすがに患者と書類を作る医師が同じ名前なのは・・・ちょっと、ダメだと思ったので整形外科の先生にお願いに。そしたら先程届いたので早くお渡ししようかと」
そうでしたか・・・と武田先生が相槌を打ち、ではお預かりしていきますと、それを受け取った。
その後も少し、桜太にぃと武田先生は難しい話をしていて、私は退屈な時間を過ごしていた。
何気なく外を見て、私も外に行きたいなぁ・・・なんて考えて・・・
・・・外、か。
『桜太にぃ?私って、外に出たらダメな感じ?』
何の前触れもなく言ったせいか、大人ふたりが瞬きを繰り返した。
桜「紡・・・なぜ、入院してるか・・・理解してるかな?」
『それは・・・もちろん分かってる。けど、足が動かせない以外は元気だよ?』
そうじゃなくてね、と桜太にぃが腕を組んだ。
『やっぱり・・・ダメかな?少しでいいんだけど、外の空気に当たりたいよ・・・』
昨日の夜から、ずっと部屋か建物の中ばかりで正直、息が詰まる。
籠りっきりだと、何だか余計な事ばかり考えそうで、それはそれで嫌だなとも思えて。
でも、1度外に出たいと思ったら、その気持ちを沈めるのはなかなか困難でもあり・・・
『ね?桜太にぃダメ?』