第26章 交差する想い
ー うん!ボクおとなになったら、さっきのおにーちゃんよりイケメンになるから!そしたら、つむぐおねーちゃんとけっこんする! ー
可愛らしい夢だなぁ、と微笑ましくなる。
桜「紡と結婚したかったら、早く元気になって先生を倒してからだな?・・・さ、お日様がある内にパパとお散歩行っておいで?お菓子は・・・ひとつだったら買って貰ってもいいよ?」
やった!!と喜び、早く行こうよと男の子が父親にせがむ。
ー あ!おーたせんせー?明日はいつものおーたせんせーになる?ボク、きょうのおーたせんせーは、はいしゃさんみたいでやだから!あしたはいつものおーたせんせーになってね? ー
そう言い残し、男の子はパパ早くーと行って車椅子に座り直す。
僕は何となく父親とお互い軽く会釈をして、僕は彼らを見送った。
「城戸さん、こんなに早く小さなお友達を作ったんですねぇ。しかもお婿さん候補ですか。可愛いですね」
桜「紡が?!ですか?!」
「えぇ・・・え?!」
桜「えっ?!」
・・・・・・・・・。
お互い顔を合わせ、ひと呼吸置いて同時に笑い出した。
「僕はあの子が可愛いと言ったんですよ?あぁ、もちろん。城戸さんも可愛らしいなぁと思ってますけど」
桜「武田先生、驚かさないで下さいよ・・・」
いつもスマートにしているお兄さんの動揺が可笑しくて、つい、また笑ってしまう。
「素直で可愛いじゃないですか。僕ももっと若かったら、求婚するかもしれないくらいに。あ、でも?そしたらお兄さんを倒さなければならないんですよね?心身ともに鍛えておけば良かったなぁ」
桜「やめてくださいよ・・・紡は午前中に退屈だと言って慧太と談話室でテレビを見てたんです。そこに集まっていた子供達と遊んだりして、仲良くなったようです」
「そうなんですか。すぐに仲良くなれるのは、彼女のいいところですね」
桜「でも、まだまだお嫁には行かせられませんからね?」
ニコリとしながらも、釘を指すように言うお兄さんも、それはそれで僕からしたら可愛らしいと思えた。
「それより、僕がさっき感じた違和感は医療ユニフォームだったんですねぇ。昨日お会いした時は、白衣でしたから」
桜「あぁ、そう言えばそうでしたね。今日は都合でこれを着ることになって・・・昨夜立て続けに救急搬送があって」