第26章 交差する想い
桜「それから、俺は医師で武田先生は教師だけど、人に対しての仕事や思いは同じですよ?」
「それは、どういう?」
桜「俺は人の命を預かり、少しでも楽しい時間を長く生きられるように手助けをする仕事をしています。武田先生は教師で、まだまだ未熟であるのを気が付かない子供達が、道に迷う事なく楽しい時間を長く過ごせる様に教えている。職業は違えど、向かう道筋は同じなんです」
心にストンと言葉が落ちてくる。
今までずっと霧がかっていた悩みが、少しずつ溶けていくのを感じながら、何度も小さく頷いた。
「素晴らしいお言葉をありがとうございます!何だか僕の方が年上なのに、お兄さんに諭された感じさえしますよ。城戸さんがあんな風に素直でいるのは、きっとお兄さんに大事にされてるからなんですね?」
桜「諭された・・・って。先生?今のは俺の独り言ですよ」
「そうでしたね?」
お互いにあはは・・・と笑い合って、お互い苦労はたくさんありますけどねと、また笑う。
ー おうたせんせー!今からおさんぽいくの!今日はパパがきてくれたから、おかしもかっていい? ー
廊下の先から、車椅子に乗った小さな男の子がこちらに向かって手を振っている。
桜「いいなぁ、パパとお散歩かぁ!先生もお散歩したいなぁ」
前に止まった車椅子の脇にしゃがみ、男の子と目線を同じにして同じテンションで会話をする姿は、僕も見習わなければ・・・と感心する。
ー せんせーもおさんぽしたいの?じゃあ、はやくかのじょつくったほうがいいよ?そしたらおててつないで、ラブラブおさんぽいけるから! ー
桜「なんだとぅ?先生は彼女いなくてもいいの!みんながいるからね?」
ー そんなこといってるから、つむぐおねーちゃんにおいこされちゃうんだよ?ボクいまみたもーん。つむぐおねーちゃんのおへやから、かれしがでてくるところ。あ、ほら。あのかっこいいおにーちゃん! ー
・・・か、彼氏?!
男の子が指差す方へ、自然と目が向いてしまう。
・・・あれは青葉城西高校の制服ではないですか。
よく見てみれば、彼は昨日の練習試合にもいましたよね?
確か名前は・・・
ー ねぇねぇ、せんせー?つむぐおねーちゃんってさ、かれしじゃなくてボクとけっこんしてくれるかな? ー
桜太「え?!結婚?!」
子供の突然の言葉に、お兄さんが動揺した。
